【2026年版】車の未来はどう変わる?バイオ燃料・水素・AI・衛星通信が変えるフリートマネジメント

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車の未来はどう変わる?バイオ燃料・水素・AI・衛星通信が変えるフリートマネジメント

 2025年末に開催された「JapanMobilityShow2025(以下JMS2025)」や2026年の幕開けとともに開催された「CES 2026」を通じて、自動車業界の未来図がより鮮明になってきました。これまでの数年間、業界は「完全な電動化」というビジョンを掲げてきましたが、2026年以降のモビリティはどう変わっていくのでしょうか。
 本記事では様々な各社の取り組みをピックアップし、最新のトレンドから見えてきた「脱炭素戦略の多様化」「AIとハードウェアの融合」「課題に合わせた新モビリティ」という3つの視点で、これからのクルマと社会の在り方を解説します。

カーボンニュートラルの現実解「脱炭素戦略の多様化」

脱炭素戦略の多様化

 2025年12月、欧州委員会は2035年にエンジン車の新車販売を禁止する方針を事実上撤回しました。これにより脱炭素に対するアプローチが「EVのみ」から、商用利用や地域特性を見据えた「適材適所のマルチパスウェイ(全方位)戦略」へと完全にシフトしたと言えるでしょう。2026年以降も引き続きEVの実用化が進む一方、水素やバイオ燃料など、既存インフラや資源を活かす現実的な解が各社から提示されています。

脱炭素についての解説はこちらの記事をご覧ください。
「脱炭素」とは何か?企業が今すぐ向き合うべき理由

スズキ:牛の糞尿がクルマを動かす? 地域資源の活用

 生活に密着したモビリティを提案する同社が力を入れているのが、CNG(圧縮天然ガス)とCBG(圧縮バイオメタンガス)の活用です。

CBG
スズキのCBG事業による循環

 インドの乗用車市場においてスズキは約4割という圧倒的なシェアを誇り、その中でも
3台に1台がCNG車となっています。新型SUV「ビクトリス」も、ハイブリッドに加えCNG使用を選択可能。ガソリン価格の高騰するインド市場で、燃料費を約60%に抑えられる経済性が圧倒的な支持を得ています。

スズキ ビクトリス
インドで販売のビクトリス(CNG/CBG仕様)

 さらにスズキは、インドに約3億頭いる牛の糞を活用したCBG事業を推進。生物由来の資源(バイオマス)から作られるCBGはさらに環境貢献度が高く、CNG車の基本的な機構を変えずに燃料として使用できるという特徴があります。原料である牛糞はもともと植物が光合成で待機中のCO2を吸収してできたものなので、燃焼させても大気中のCO2は実質的に増えず、カーボンニュートラルなサイクルが実現できます。
 また、この事業は単なる環境対策ではなく、現地の農家にも利益をもたらす循環型モデルともなっています。スズキは農家から牛糞を「1kgあたり2円」で買い取ることで農家(特に女性)に新たな収入源をもたらし、ガスを生成した後の発行残渣は栄養豊富な有機肥料として農地に還元。将来的にこのモデルをASEANやアフリカなど他地域へも展開することを目指しています。

マツダ&いすゞ:既存インフラを生かす「バイオ燃料」の実用化

 EV化が難しい領域や、既存のエンジン車を活用したいというニーズに応えたのが、マツダといすゞのバイオ燃料です。
 マツダは、微細藻類「ナンノクロロプシス」を用いたバイオ燃料を開発しています。藻が成長過程でCO2を吸収するため、燃料として燃やしても実質的なCO2排出はプラスマイナスゼロになります。さらに、残渣を肥料やプラスチックに再利用することで、将来的にはCO2排出量を吸収量が上回る「カーボンネガティブ」、つまり「走れば走るほど空気がきれいになる」社会が実現するといえるでしょう。

微細藻類「ナンノクロロプシス」
微細藻類「ナンノクロロプシス」を用いたバイオ燃料

 いすゞが開発しているのは廃食油を再利用した「HVO(ハイドロトリーテッド・ベジタブル・オイル)」燃料。このHVOは廃油に水素処理を施して不純物を除去し、成分をディーゼル燃料に近づけたもの。軽油とほぼ同等の性能を持ち、車両の改造なしにそのまま使える「ドロップイン燃料」であることが最大の特徴です。欧州では市場投入が進んでおり、いすゞは2024年秋に国内での実証実験を開始しています。

HVOが普通に給油できる未来を目標としている
HVOが普通に給油できる未来を目標としている

 両社の取り組みに共通するのは、公共交通や物流といった社会インフラ領域から次世代バイオ燃料を導入し、段階的に普及を拡大していく戦略です。大量の燃料を必要とするこの領域では、車両の電動化だけでは対応が難しい状況です。今ある仕組みに新しい燃料を適応させていく発想は、今後の有力な選択肢になり得るでしょう。

豊田合成:水素を「持ち運ぶ」カートリッジで生活を変える

 ガソリンに代わる燃料として注目されているものの一つが水素です。豊田合成は持ち運びできるポータブル水素カートリッジと、その活用可能性を見出しています。
 注目すべきは、水素利活用の新たな可能性を示す小型FCVコンセプト「FLESBY HY-CONCEPT」。初公開となるこの車両は、歴代の「Flesby」シリーズのデザインDNAを受け継ぎつつ、持ち運び可能な約8.5kgの水素カートリッジを3本搭載して走行するのが特徴です。カートリッジの重量は、人力での持ち運びやすさを考慮して設定されました。

水素カートリッジ
車両背面には3本の水素カートリッジが見える

 また車両だけでなく、カートリッジ交換式の水素スクーターや、カートリッジからワイヤレス給電を行う電動スケートボードも提案しています。これにより、水素をモビリティの動力源としてだけでなく、家庭用電源や生活機器のエネルギー源として「携帯可能」なものにする未来像を提示しています。また、このカートリッジ技術はトヨタグループの連携により、JMS2025で公開された「水素サウナ」にも応用されています。豊田合成は、インフラ整備の課題に対し、水素を身近な生活エネルギーとして取り込む提案を行うことで、水素社会の実現を後押ししています。

三菱ふそう:「水素エンジン」と「燃料電池」を並行開発

 三菱ふそうトラック・バスは、商用車のカーボンニュートラル実現に向け、水素エンジン車「H2IC」と燃料電池車「H2FC」という2種類の大型トラックをJMS2025にて世界初公開。水素の供給網や充填インフラの整備状況、顧客要件など外部環境の不確実性により予測できない状況において、2つの水素技術の並行開発という柔軟性で商用車の未来を示しています。

 水素エンジンを搭載した「H2IC」は、既存のディーゼルエンジンの部品を約80%流用できるという特徴を持ちます。既存の製造ラインやサプライチェーンを活用できるため初期投資を抑えた量産化の道筋をつけやすいメリットを持っています。また燃料電池車と比べて購入コストが低いこともあり、「水素社会への橋渡し役」と位置付けられています。

H2IC
水素エンジンを搭載した「H2IC」

 一方、「H2FC」は圧縮水素ガスよりも高密度な「サブクール液体水素」を採用し、最大1,200kmの航続距離を実現しました。従来、液体水素の取り扱いで課題だったボイルオフガス(蒸発ガス)を出さずに急速充填が可能で、ステーション設備の簡素化にも貢献します。同社は岩谷産業と提携し、この液体水素充填技術の国内確立と普及を目指しており、物流業界における水素活用の多様な選択肢を提示しています。

H2FC
サブクール液体水素を採用した「H2FC」

フィジカルAIによる「思考するモビリティ」

フィジカルAI

 2026年の技術トレンドで最も重要なキーワードが「フィジカルAI(Physical AI)」です。 これまで話題だった生成AI(ChatGPTなど)が「文章や画像」を作るものだったのに対し、フィジカルAIは「現実世界の物理法則を理解し、ロボットや車を自律的に動かす」ためのAIです。
 CES 2026ではNDIVIAが次世代自動運転車用に設計されたAI基盤「Alpamayo」を発表するなど、今後フィジカルAI×モビリティの動きはさらに加速していくことが予想できます。

フィジカルAIが実現する「ADV(AI-Defined Vehicle)」とは?

 これまでの自動運転では「人間が書いたプログラム」で動いていました。「赤信号=止まる」というパターンを記憶させ、その状況に対する反射という形で制御する構築です。しかし、フィジカルAIを搭載したADVが違うのは「リーズニング(なぜその行動を行ったのか)」を言語化することができる点です。AIが大量の走行データから運転のコツや物理的な危険を自ら学習し、複雑な運転でも「なぜその意思決定をしたか」を言語化することができる次世代の自動運転を実現するものと言えるでしょう。

NDIVIA:「クルマが思考する」時代へ導く「Alpamayo」

NDIVIA Alpamayo

 2026年のCESに合わせNVIDIAが発表した「Alpamayo(アルパマヨ)」ファミリーは、自動運転AIの開発手法を根本から変えるゲームチェンジャーとなりそうです。その核心は、「視覚言語モデル(VLM)」によるリーズニング(推論)機能の実装と、徹底した「オープン戦略」にあります。
 従来のニューラルネットワークを用いたエンドツーエンド(E2E)学習は、入力(画像)から出力(操作)までの過程が「ブラックボックス」であり、事故時の原因究明や安全性証明が困難でした。対してAlpamayoは、VLMを活用することで、AIが画像内の事象を認識し、「なぜ減速するのか」といった判断プロセスを自然言語で説明可能にします。これにより、コーナーケース(稀な複雑状況)における検証やデバッグの効率が劇的に向上し、OEMが抱える「説明責任(Accountability)」の課題を技術的に解決へ導きます。

 さらに注目すべきは、NVIDIAがこの基盤モデルや1,700時間分のデータセットをオープンソース化した点です。これは、開発の参入障壁を下げることで業界標準を握り、結果として自社の次世代SoC「DRIVE Thor」のエコシステムへ各社を強力に誘引する高度なプラットフォーム戦略と言えます。

 「動く」だけでなく「説明できる」AIへ。Alpamayoは、自動運転の実装フェーズを一段階上へと引き上げる重要な布石です。

社会課題のソリューションとしての「新モビリティ」

新モビリティ

 エネルギーとAIの進化だけでなく、クルマの形そのものも「社会」に対応した変化が起こっています。注目すべきは「物流の人手不足」「地域に合ったモビリティ」「災害対策」という3つの喫緊の課題に対する具体的なソリューションとしてのモビリティです。

トヨタ自動車:「TO YOU」の視点で拡張するモビリティの役割

 トヨタ自動車は、従来の「Mobility for All」から一歩踏み込み、個人の課題に深く寄り添う「TO YOU(あなたのために)」という視点で、地域ごとの物流や移動の課題に対する解決策を提示しています。その中核を担うのが、用途に合わせて自在に姿を変える「超拡張性能」を備えたEV「KAYOIBAKO(カヨイバコ)」です。

KAYOIBAKO
KAYOIBAKO

 KAYOIBAKOは、単なる配送車にとどまらず、過疎地域での移動販売車や乗り合いバスとしての活用も想定されており、地域の生活インフラを支える役割を担います。さらに、ダイハツと連携してXLからSまでのサイズ展開を行うことで、広い幹線道路から狭い路地が多い地域まで、その土地の道路事情に合わせた最適な「箱」の提供を可能にしました。また、足に障害がある方でも手だけで操作できる運転システムを採用するなど、誰もが社会参画できるユニバーサルな設計も特徴です。

KAYOIBAKO車内イメージ1
KAYOIBAKO車内イメージ2

 クルマだけでは完結しない配送のラストワンマイルを埋める「パートナー」としては、2台のロボットが登場しました。4足歩行ロボット「CHIBIBO(ちびぼ)」は、車両が入れない複雑な路地や階段も乗り越え、玄関先まで確実に荷物を届けます。また、重量物の運搬を支援する「KB LIFTER」は、フォークリフトのような資格が不要で、ゲーム感覚の操作で誰でも重い荷物を扱えるようにし、慢性的な労働力不足に悩む物流現場を支えます。

CHIBIBO(ちびぼ)
CHIBIBO(ちびぼ)
KB LIFTER
KB LIFTER

 「移動」だけでなく「運ぶ」「働く」という行為のバリアを取り払い、地域や個人の事情に合わせた持続可能な社会基盤の構築を目指していると言えるでしょう。

日野自動車:地域の手足となるEVバス「ポンチョドット」

 日野自動車が地域社会の課題へ「優しい回答」として提示するのが、小型BEVバス「ポンチョドット」です。「ポンと乗って、ちょこっと行く」というコンセプトのもと、地域住民の身近な移動手段として開発されました。ベース車両には超低床EVトラック「日野デュトロ Z EV」を採用しており、高齢者や子供でも乗り降りしやすいノンステップ構造を実現しています。

小型BEVバス「ポンチョドット」
小型BEVバス「ポンチョドット」

 この車両の最大の特徴は、車内に設置された「跳ね上げ式シート」を活用した、柔軟な「貨客混載」システムです。朝夕の通勤・通学時間帯には座席を下ろしてバスとして稼働しますが、乗客の少ない日中には、映画館の座席のようにシートを跳ね上げて広いスペースを確保し、宅配便などを運ぶ配送車へと役割を変化させます。

小型BEVバス「ポンチョドット」車内空間

 過疎化によって維持が難しくなったバス路線の存続と、EC拡大や労働力不足に直面する物流業界の課題。これらに対し、一台の車両が時間帯に応じて「人の足」と「物流の手」を使い分けることで、地域のインフラを効率的に支えるという、日野自動車ならではの現実的かつ温かみのある解決策が示されています。

ダイハツ工業:暮らしの幸福度を高める「小さいクルマ」

 大型化が進む自動車業界において「小ささ」に価値を見出すダイハツ工業が開発するのは、往年の名車「ミゼット」の精神を継ぐ「ミゼットX」です。開発担当者が「ママチャリの延長」と語る通り、狭い路地でも気軽に使えるサイズ感で、日常の身近な移動を支えます。特筆すべきは、親子での利用を前提とした内装設計です。運転席から振り返ればすぐに子どもの顔が見える距離感や、ドアハンドルにボルダリングのホールドのような遊び心ある意匠を採用するなど、移動の楽しさと安心感を追求しています。

ダイハツ ミゼットX
ミゼットX

 2026年に生産終了が決まっている「コペン」の魂を受け継ぐ軽オープンコンセプト「K-OPEN」もダイハツを象徴するモビリティです。軽自動車ながらFR(後輪駆動)レイアウトを採用し、走る喜びを妥協しない姿勢を示しています。さらに、災害時の給電ステーションや移動店舗としても活用できる商用EV「e-ATRAI」など、生活の道具として、また趣味の相棒として、人々の暮らしの幸福度を高める「小さなモビリティ」の可能性を提示しています。

K-OPEN
K-OPEN
e-ATRAI
e-ATRAI

オフグリッドフィールド:「インフラに頼らない」自立型空間の実装

 竹中工務店傘下のオフグリッドフィールド社は、建設会社でありながら「インフラに頼らない世界」を目指すという、逆説的かつ革新的なビジョンを掲げました。展示されたモバイルハウスやトレーラーハウスは、送電網がない場所でも自立して機能する「動く拠点」としての可能性を示しています。

SHINWA DENKO
SHINWA DENKOのモバイルハウスに自立型電源を搭載した展示車両

 同社の提案するシステムは、太陽光パネルだけに依存せず、蓄電池やバックアップ電源を組み合わせた「分散型電源モデル」です。天候や日陰の影響を受けやすい建設現場の実情を踏まえ、低負荷の通信機器や監視カメラなどを長時間安定して稼働させることを可能にしました。さらに、衛星インターネットによる通信機能や、自力で移動できる駆動装置も備えており、電源・通信・移動のすべてが自己完結する「オフグリッドハブ」としての機能を持ちます。

 この技術は、建設現場の事務所としてはもちろん、災害時の復興支援拠点や、イベントスペース、子どもの防災教育の場など、日常と非常時を問わず多目的に活用できる「フェーズフリー」なモデルです。将来的には水やトイレなどの生活インフラも統合し、どこでも「働ける・暮らせる」環境を全国に展開する構想を描いており、災害に強く柔軟な社会基盤の構築に向けた重要な一歩を示しています。

NTTドコモビジネス×NCS:どこでもつながる移動型災害対策

 エネルギーとモビリティのハードウェアがいかに進化しても、それを制御し、つなぐための「通信インフラ」がなければ機能しません。 私たちNCSはNTTドコモビジネス株式会社様と協業し、未来のBCPソリューション「Mobility Solution」を提案しています。

NTTドコモビジネス×NCS

 近年、能登半島地震や各地の豪雨災害において、「通信の途絶」が救助や事業復旧の最大の障壁となりました。携帯電話の基地局が被災すれば、スマートフォンも使えなくなります。 そこで提案したのが、以下の3つを統合した「自己完結型」の通信車両です。

  1. Starlink Business(衛星通信)
    上空の視界さえ確保できれば、山間部、海上、被災地など、地上のインフラ状況に関わらず高速通信が可能になります。従来の衛星電話よりも圧倒的に高速で、Web会議や大容量データの送受信もスムーズです

  2. NCS提供のEV(電気自動車)
    移動手段としてだけでなく、大容量バッテリーによる「電源供給源」として機能します。Starlink Businessに必要な電源もEVから確保できることで、移動可能な災害対策ソリューションを実現しました。

  3. 通信×移動で広がる未来の可能性
    不感地帯の現場で素早く通信環境を構築することで、リアルタイムでの通信による業務効率化に貢献します。

車×Starlink Businessの可能性を記載したボード
Starlink Businessを乗せた車

この車両があれば、災害発生直後に現地へ急行し、EVからの給電でStarlinkを起動。わずか数分で、その場所を「対策本部」や「臨時のオフィス」に変えることができます。

Starlink Businessを用いた取り組みについて、詳しくはこちらをご確認ください。
Starlink Business×モビリティによる“新たな価値創出”

まとめ

2026年以降のモビリティは、「多様なエネルギー」で動き、「フィジカルAI」で賢く判断し、「多機能なハードウェア」で社会課題を解決する存在へと進化の様相を見せています。

これからの企業における車両管理では、単に燃費の良い車を選ぶだけでなく、「自社のエリアに最適なエネルギーは何か?」「AIによる安全支援をどう活用するか?」「災害時に事業を継続できる通信・電源を持っているか?」という多角的な視点が必要です。

NCSでは、EV・FCEVの導入支援から、最新のドラレコ、そしてStarlinkを用いたBCP対策まで、企業の未来を見据えたモビリティ活用をワンストップでサポートいたします。