コラム

【2026年法改正】自転車青切符・生活道路30キロ制限、企業管理者が知るべき「リスクと対策」

法令対応 車両管理高度化
【2026年道交法改正】自転車青切符・生活道路30キロ制限企業管理者が知るべき「リスクと対策」

本記事は2026年1月現在の法令・警察庁公表資料等に基づいて作成しています。施行日・内容等の詳細は、最新の官報・警察庁および都道府県警察の公表情報をご確認ください。

2026年にかけて施行される道路交通法の改正は、企業の車両管理実務を大きく変える転換点となります。特に「自転車の青切符導入」や「生活道路30キロ制限」は、従業員の通勤や配送ルートに直結する重要課題です。
本コラムでは、法改正の全容を整理し、企業が今から準備すべきリスク対策と実務対応について解説します。

【全体像】今後の法改正ロードマップ

2026年の法改正について

今回の改正は、一度にすべてが変わるわけではありません。まずは時系列で施行スケジュールを把握し、社内の準備計画(ロードマップ)を引きましょう。

施行スケジュール一覧
施行時期 改正項目 想定できる対象 企業への影響度
2024年11月1日
(開始済)
・自転車運転中のながらスマホ罰則規定
・自転車の酒気帯び運転および幇助罰則規定
・自転車の罰則規定強化
全従業員
(通勤含む)
★★★
2025年3月24日
(開始済)
・運転免許証とマイナンバーカードの一体化
・マイナ免許証の運用開始
全ドライバー ★★★
2026年4月1日
(予定)
・自転車の交通反則通告制度(青切符)導入
・16歳以上の自転車利用者が対象
全従業員
(通勤含む)
★★★
・車が自転車を追い越す際のルール新設
・自動車・自転車の両方の規定が新設
全従業員
(通勤含む)
★★
・普通仮免許の取得年齢引き下げ
・17歳6ヶ月から取得可能に
新卒採用
2026年9月1日
(予定)
・生活道路の法定速度引き下げ
・中央線のない道路は一律30km/hへ
営業・配送 ★★★

このように、2025年度から2026年度にかけて、管理者が対応すべき課題は山積みです。それぞれの項目について、詳細なリスクと対策を見ていきましょう。

自転車の「青切符」制度導入(2026年4月予定)

自転車の青切符

これまで、自転車の違反に対する取り締まりは、「現場での指導警告(注意)」で済むか、悪質な場合の「刑事手続(赤切符)」かの両極端でした。しかし、赤切符は起訴手続きの負担が重く、実際にはほとんどの違反が黙認されてきたのが実情です。
こうした現状を是正し、違反に対する責任を明確にするために導入されるのが、自動車と同じ「交通反則通告制度(青切符)」です。

 誰が、どんな時に対象になるのか?

  • 対象者:16歳以上のすべての人(企業においては、高校生アルバイトを含む全従業員が対象)

  • 対象違反:約113種類の違反行為

令和6年11月1日より新しく罰則規定された「酒酔い運転」「酒気帯び運転」や「妨害運転」を行ったとき、また運転中に携帯電話・スマートフォン等を使用して事故を起こしたり、歩行者の通行を妨害したりするなどして実際に交通の危険を生じさせたときは、刑事罰の対象として扱われることがあります。

  • 携帯電話・スマートフォン等を手に保持して通話したときや、画面を注視したときは、青切符の対象となる反則行為となります。

刑事手続と青切符の違い

検挙の対象となる「悪質・危険な違反」とは、「違反自体が悪質・危険なもの」と、「違反が招いた結果が悪質・危険なもの」、「違反の行われ方が悪質・危険なもの」があります。
以下に刑事手続になる場合と青切符となる場合の違いをまとめました。

  • 違反自体が悪質・危険なもの
    刑事手続:刑事手続によって処理される重大な違反(酒酔い運転・酒気帯び運転、妨害運転、携帯電話使用等)
    青切符:反則行為の中でも、重大な事故につながるおそれが高い違反(遮断踏切立入り、自転車制動装置 不良、携帯電話使用等(手に保持して通話したときや、手に保持して画面を注視したとき。)

  • 違反自体が悪質・危険なもの
    刑事手続:刑事手続によって処理される重大な違反(酒酔い運転・酒気帯び運転、妨害運転、携帯電話使用等)
    青切符:反則行為の中でも、重大な事故につながるおそれが高い違反(遮断踏切立入り、自転車制動装置 不良、携帯電話使用等(手に保持して通話したときや、手に保持して画面を注視したとき。)

  • 違反が招いた結果が悪質・危険なもの
    刑事手続:違反により実際に交通事故を発生させたとき
    青切符:違反の結果、実際に交通への危険を生じさせたり、事故の危険が高まっているとき

  • 違反の行われ方が悪質・危険なもの
    青切符:違反であることについて指導警告されているにもかかわらず、あえて違反を行ったとき

反則金(罰金)の目安

警察庁から示されている反則金は以下の通りです。原付バイクと同等の水準が設定される見込みです。

<主要な違反と反則金>
違反の種類 反則金(目安) 具体的シチュエーション
ながらスマホ(保持) 12,000 円 業務連絡を確認しながらの走行、通話など
信号無視 6,000 円 「歩行者信号が青だから」と車道を渡る行為 など
右側通行(逆走) 6,000 円 車の進行方向と逆向きに路側帯を走る行為
歩道通行 6,000 円 原則車道、歩道は例外(徐行義務あり)
踏切不停止 6,000 円 踏切の直前で停止しない行為
一時不停止 5,000 円 「止まれ」標識で足を着いて止まらない行為
傘差し運転 5,000 円 雨の日の通勤時によくある違反
イヤホン使用 5,000 円 周囲の音が聞こえない状態での走行
並進(並走) 3,000 円 同僚と並んで会話しながらの走行

参考:「自転車を安全・安心に利用するために」(自転車ルールブック)の作成について|警察庁

特に注意すべきは「一時不停止(5,000円)」です。住宅街の路地などにある「止まれ」の標識。車では止まる人でも、自転車だと減速だけで通過してしまうケースが後を絶ちません。今後は、これも立派な取り締まり対象となり、即座に5,000円の納付が求められます。

企業が抱える「賠償責任リスク」

「自転車の違反程度」と軽く考えてはいけません。企業にとって最大のリスクは、反則金そのものではなく、その背景にある「使用者責任(民法715条)」です。

(使用者等の責任)

第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索

もし従業員が業務中(移動や配達)や通勤中に自転車で違反を犯し、歩行者と衝突して怪我を負わせた場合、会社も連帯して損害賠償責任を負う可能性があります。

過去には、小学生が起こした自転車事故で、監督義務者に対し約9,500万円(神戸地裁 平成25年7月4日判決)の賠償が命じられた事例もあります。青切符制度の導入は、「自転車の違反=明確な法令違反」という証拠を公的に残すことになり、企業の管理責任がより厳しく問われる契機となり得ます。

また、青切符対象の反則行為だけではなく、酒酔い運転、酒気帯び運転、ながらスマホなど刑事手続対象の違反についても引き続き注意しなければいけません。この制度導入を契機に、今一度社内への教育を徹底することが大切です。

【実務対応】企業がいま準備すべき3つのこと

  1. 自転車通勤規定の改定
    就業規則や車両管理規定を見直し、「自転車で青切符(反則金)を受けた際は、会社へ報告すること」を義務付けてください。違反を隠蔽させない風土作りが重要です。

  2. 個人賠償責任保険の加入義務化
    自転車通勤を許可する条件として、「賠償責任限度額1億円以上」の保険加入を必須とし、保険証券のコピーを提出させる運用などにより、もしもの時に備える対策を打ちましょう。

  3. 「ながらスマホ」の厳罰化とヘルメット着用推奨
    2023年4月からヘルメット着用は「努力義務」となっています。万が一の事故の際、ヘルメット未着用だと過失割合で不利になるケースもあります。「業務中の自転車利用時はヘルメット着用」をルール化することも検討しましょう

生活道路の30km/h制限(2026年9月予定)

生活道路を運転している女性

物流・配送事業者や、営業車で住宅街を回る企業にとって、今回の法改正の中で最も実務への影響が懸念されるのが、この速度規制の変更です。

これまでは「標識を見て速度を守る」ことが基本でしたが、今後は「道路の見た目で制限速度を判断する」必要が生まれます。ドライバーが無意識に通り抜けていた「いつもの近道」が、ある日突然、検挙対象エリアに変わるリスクをはらんでいます。

「標識がなくても30キロ」

これまで、最高速度の標識がない一般道(法定速度)は、一律「60km/h」でした。 しかし2026年9月以降は、以下の条件を満たす道路の法定速度が一律「30km/h」に引き下げられます。

  • 中央線(センターライン)がない

  • 道路の幅員が5.5メートル未満

つまり、住宅街や商店街の裏道など、いわゆる「生活道路」は、30キロの標識が立っていなくても自動的に30キロ規制となります。
参考:生活道路における法定速度について|警察庁

なぜ「30キロ」なのか?

警察庁のデータによれば、車両と歩行者の衝突事故において、衝突速度が30km/hを超えると致死率が急激に上昇することが明らかになっています。

自動車の速度(km/h) 歩行者の致死率(%)
0〜20 0.4
20〜30 0.9
30〜40 2.7
40〜50 7.8
50〜60 17.4

参考:生活道路における安全確保|警察庁

これまでも特定のエリアを「ゾーン30」として規制する取り組みはありましたが、標識設置のコストや手間の問題で普及に限界がありました。今回の改正は、法律そのものを変えることで、全国の生活道路を一気に安全化しようとする意図があります。

ドライバーが注意すべきリスク

本改正における最大の実務的懸念点は、「道路環境の視覚的な変化を伴わずに規制が強化される」点です。新たな標識が設置されるわけではなく、施行日(9月1日予定)を境に、従来は法定速度60km/hであった道路が、自動的に30km/h規制へと変更されます。

ドライバーがこの変更を正しく認識せず、従来通りの感覚(40〜50km/h)で走行した場合、即座に「10〜20km/h以上の速度超過」として検挙対象となります。違反累積による免許停止処分は、ドライバー個人の問題にとどまらず、企業の車両稼働率低下や代替要員の確保といった直接的な業務損失に直結します。

【実務対応】抜け道利用の禁止とDX活用

  1. 「抜け道」の禁止指導
    幹線道路の渋滞を避けるために住宅街(生活道路)へ入る行為は極力避けましょう。常に30キロ以下での走行によりかえって時間がかかる上、取り締まりや事故のリスクだけが高まります。「急がば回れ(幹線道路優先)」を徹底させてください。

  2. カーナビ・テレマティクスのデータ更新
    古い地図データのままのカーナビは、生活道路でも「法定速度60キロ」と案内し続ける恐れがあります。ナビソフトの更新や、最新の法規制に対応したクラウド型テレマティクスの導入を検討してください。

  3. 走行履歴の可視化
    テレマティクスサービスにより、走行の管理を行うことも有効です。GPSを活用し、指定エリア(スクールゾーン等)での速度超過をアラート検知する仕組み作りが有効です。

テレマティクスの詳細についてはこちらをご覧ください。
自動車事故ゼロも夢じゃない「テレマティクスサービス」とは?

その他の重要改正ポイント

自転車と車

ここまで解説した大きな2つの改正以外にも、日常の運転業務や採用計画に直結する重要な改正が含まれています。見落としがちなポイントもしっかり押さえておきましょう。

車が自転車を追い越す際のルール新設

改正道交法第18条により、自動車が自転車を追い越す際のルールが明確化されました。

自動車
 自動車等は、十分な間隔が取れない状況で自転車等の右側を通過するときは、自転車等との間隔に応じて安全な速度で進行しなければなりません(道路交通法第18条第3項)。違反した場合、3ヶ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金、反則金(普通車7,000円)、違反点数2点が課されます。
自転車
 車両と自転車の間に十分な間隔がない状況で車両が自転車の右側を通過するときは、自転車は、できる限り道路の左側端に寄って、通行しなければなりません(道路交通法第18条第4項)。これに違反すると、被側方通過車義務違反として、反則金(5,000円)の対象となります。

参考:道路交通法の一部を改正する法律(令和6年法律第34号)概要|警察庁

十分な間隔については法律の条文には具体的な数値は書かれていませんが、実務上の基準として広く認識されているのが「1.5メートル」です。
愛媛県などの条例や警察の交通教則、さらには国際的な安全基準において、自転車との安全な間隔は「1.5メートル以上」が推奨されています。
参考:思いやり1.5m運動|愛媛県

17歳6ヶ月での普通仮免許取得

早生まれの者も高校卒業までに普通免許等を取得できるよう、普通仮免許の年齢要件を18歳から17歳6か月に引き下げました。これにより高校在学中に教習所での技能研修を開始し、普通仮免許を取得することが可能になります。

メリット
高校卒業(4月1日)の時点で、すでに本免許を取得済み、あるいは即戦力に近い状態での入社が可能となり、新人ドライバーの育成期間を大幅に短縮できます。
注意点
本免許の交付(受験資格)自体は18歳からです。路上教習を終えても、免許証を手にするのは誕生日以降となります。
企業内教育
18歳になりたてのドライバーは、法的には運転可能ですが、経験値はゼロに等しい状態です。特に準中型トラックなどを運転させる場合、初任運転者講習(国土交通省令)に加えて、同乗指導期間を十分に設けることが安全管理上の義務となります。

マイナ免許証の有効期限確認(2025年3月〜)

マイナンバーカード

2025年3月24日にスタートした「マイナ免許証」と運転免許証の一体化。施行から一定期間が経過しましたが、現場での管理体制は定着しましたでしょうか?

利便性が向上した一方で、管理者の実務負担やリスク管理の難易度は依然として高いままです。改めて、運用上の注意点と推奨される対応策を振り返ります。

「有効期限」が見えない問題

マイナ免許証(免許情報を登録したマイナンバーカード)の券面には、「運転免許の有効期限」や「免許の種類(中型・大型など)」が一切印字されていません。

従来の免許証のように、点呼時にパッと見て期限切れを防ぐアナログな確認手法が使えない状態が続いています。

うっかり失効は「会社の責任」に

もし、従業員が更新通知(ハガキ等)を見落として更新を忘れ、免許失効状態で運転業務を行ってしまった場合、「無免許運転」であると同時に、企業側も「無免許運転の下命・容認」として厳しく処罰される可能性があります。

「カードの見た目は変わらない」ため、目視確認だけでは失効を見抜けないという構造的なリスクは、施行後も変わりません。

【実務対応】「2枚持ち」が現実解

読み取りのたびに「従業員本人が設定した4桁の暗証番号」を入力させる手間は、多忙な点呼現場にとって大きな負担です。
リスクヘッジの観点から、多くの企業で定着しつつあるのが以下の運用です。従来の免許証も更新・取得し、携帯すること(2枚持ち)

  • または、運転経歴証明書等の、有効期限が視認できる書類を携帯すること
    (※従来の免許証は、マイナ免許証と併用して持ち続けることが可能です)

マイナ免許証について詳しく解説した記事はこちらからご確認ください。
マイナ免許証が“企業の車両管理”に与える影響とは?

よくある質問(FAQ)

よくある質問
Q1. 自転車の青切符は、自動車免許の点数や「ゴールド免許」に影響しますか?

A. 原則として影響しませんが、例外もあります。
自転車の青切符(反則金)は、自動車の運転免許の点数制度とは切り離されています。そのため、青切符を交付されても、原則として自動車免許の点数が引かれたり、次回の更新でゴールド免許が剥奪されたりすることはありません。 ただし、青切符を無視して処分(赤切符相当)になった場合や、重大な事故を起こした場合は、刑事罰として影響が出る可能性があります。

Q2. 自転車通勤中の違反で、会社が責任を問われることはありますか?

A. はい、賠償責任を負う可能性があります。
従業員が通勤中や業務中に自転車で他人に怪我を負わせた場合、企業は民法715条の「使用者責任」を問われる可能性があります。自転車保険の加入義務化や、自転車運転の教育など、就業規則レベルでの対策が必要です。

Q3. 生活道路(30キロ制限)は、バイクや原付も対象ですか?また、見分け方は?

A. 全車両が対象です。「センターラインなし」を目印にしてください。
30km/h制限は、四輪車だけでなく、バイクや原付を含むすべての車両に適用されます。 対象道路の見分け方は、「センターラインがない」かつ「道幅が狭い(車同士のすれ違いが厳しい)」かどうかです。ドライバーには「住宅街に入ってセンターラインが消えたら、即30キロ以下」とシンプルに指導するのが効果的です。

Q4. マイナ免許証への切り替えは義務ですか?

A. いいえ、任意です。
現在のところ、従来の免許証を持ち続けることも可能です。会社としては、有効期限管理のリスクを避けるため、業務運転者には「従来の免許証」の維持(2枚持ち)を強く推奨することをお勧めします。

まとめ

2026年に向けた一連の道交法改正は、単なる交通ルールの変更ではなく、社内の規定を見直すなどの対応が必要な課題と言えるでしょう。

従業員の免許停止による稼働率低下、自転車事故に起因する高額な損害賠償、そしてコンプライアンス違反による社会的信用の失墜。これらはすべて、企業の事業継続性(BCP)を脅かす直接的なリスクとなり得ます。「現場のドライバー任せ」にするのではなく、管理部門が主導して「守れる仕組み」を構築することが、企業の防衛策として不可欠です。