コラム

【2026年版】全国交通安全運動に合わせた企業・自治体の車両管理担当者がやるべき具体的な対策とは?

働き方・コンプライアンス 安全運転・事故削減
全国交通安全運動

 2026年も春の全国交通安全運動を迎えました。毎年この時期になると社内掲示物を貼り替えて終わり、という企業も少なくないのではないでしょうか。しかし、それだけでは交通安全対策を十分に行ったとは言えません。

 本コラムでは、企業が交通安全対策に取り組むべき法的根拠から、2026年春の重点項目の解説、そして明日から実行できる具体的な対策までを体系的に整理します。全国交通安全運動の期間を、実効性のある安全管理体制づくりのきっかけにしていきましょう。

企業はなぜ交通安全対策を行わなければいけないのか?

 

企業はなぜ交通安全対策を行わなければいけないのか

 交通安全対策は、ドライバー個人の心がけで完結するものではありません。法律上、企業には従業員の安全を守る義務と、第三者に損害を与えた際の賠償責任が課せられています。本章では、企業が交通安全対策を経営課題として捉えるべき2つの理由を解説します。

企業に問われる使用者責任と安全配慮義務

 従業員が業務中に交通事故を起こした場合、その責任はドライバー本人に留まりません。企業にも法的責任が問われる可能性があります。根拠となる法律は主に2つです。

 1つ目は、民法第715条に定められた「使用者責任」です。従業員が業務の執行中に第三者に損害を与えた場合、使用者である企業もその損害を賠償する責任を負います。判例上、企業側が免責されるケースは極めて限定的であり、事実上の無過失責任として運用されています。たとえば営業車で取引先へ向かう途中に人身事故を起こせば、ドライバー個人だけでなく会社にも損害賠償請求が及ぶのが通常です。
参考:民法715条|E-GOV法令検索

 2つ目は、労働契約法第5条に規定される「安全配慮義務」です。企業は、労働者がその生命や身体等の安全を確保しつつ働けるよう、必要な配慮をしなければなりません。具体的には、長時間運転による過労の防止、健康状態の把握、適切な運行管理といった措置が求められます。

さらに、道路交通法に基づく安全運転管理者制度により、一定台数以上の車両を保有する事業所では、安全運転管理者を選任し、運転者への安全運転指導や車両の日常点検を実施する義務があります。つまり、企業が交通安全対策を怠ることは、法令違反のリスクを抱えることに直結します。
参考:労働契約法第1章第5条|E-GOV法令検索

事故がもたらす経済的・社会的ダメージ

 交通事故が企業にもたらす損失は、修理費や保険料の増額といった「見えるコスト」だけではありません。実際には、それを大きく上回る「見えないコスト」が企業経営を圧迫します。

 内閣府の「交通事故の被害・損失の経済的分析に関する調査研究」によれば、交通事故による社会全体の損失額は年間約10.1兆円にのぼり、20代以上の一人当たり死亡損額は約6.4億~11.2億円と試算されています。企業単位で見れば、以下のようなダメージが複合的に発生します。

直接的なコスト

・ 車両の修理・代替費用
・ 自動車保険料の割増(等級ダウン)
・ 被害者への損害賠償・慰謝料
・ 行政処分・罰金

間接的なコスト(見えないダメージ)

・ 事故対応に伴う業務の停滞・生産性の低下
・ 社名報道やSNS拡散による企業ブランド・社会的信用の毀損
・ 従業員のメンタルヘルス悪化や離職リスクの上昇
・ 取引先や顧客からの信頼低下、契約の打ち切り

参考:令和4年度交通事故の被害・損失の経済的分析に関する調査(令和5年3月)

 年2回ある全国交通安全運動は、これらのリスクに対しての対策を施す絶好の機会と言えるでしょう。

全国交通安全運動とは?

全国交通安全運動とは

 具体的な対策を検討する前に、全国交通安全運動の基本的な枠組みを押さえておきましょう。

運動の目的と主催組織

 全国交通安全運動は、国民一人ひとりに交通安全思想を普及・浸透させ、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣づけることを目的としたキャンペーンです。

 主催は内閣府を中心に、警察庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省をはじめとする多数の省庁のほか、都道府県・市区町村の地方自治体、さらに全日本交通安全協会や全日本トラック協会などの関係団体が名を連ねます。いわば「オールジャパン」で取り組む交通安全の一大イベントです。

実施時期(春・秋の年2回)

 全国交通安全運動は、毎年春(4月)と秋(9月)の年2回実施されます。

 春は新年度の始まりで、新入社員の配属や人事異動による運転環境の変化が大きい時期です。加えて、新学期を迎えた子どもたちの通学が始まるため、通学路での事故リスクが高まります。一方、秋は日没時間が早まり、夕暮れ時の交通事故が増加する傾向があります。

 つまり、春と秋のそれぞれに異なるリスク要因があり、どちらの時期も「社内の安全管理体制を再点検する絶好の機会」です。運動期間をカレンダーに組み込み、定例的な安全対策の見直しサイクルとして活用することをお勧めします。

2026年春の全国交通安全運動とは?

2026年(令和8年)春の全国交通安全運動
画像の出典:内閣府・交通安全対策サイト

実施期間と基本方針

 2026年(令和8年)春の全国交通安全運動は、4月6日(月)から4月15日(水)までの10日間にわたって実施されます。また、4月10日(金)は「交通事故死ゼロを目指す日」として特に重点的な啓発活動が行われます。

 基本方針は、広く国民に交通安全思想の普及・浸透を図り、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣づけるとともに、国民自身による道路交通環境の改善に向けた取組を推進することにより、交通事故防止の徹底を図るものです。

 2026年春の運動では、以下の3つが全国重点項目として掲げられています。

重点項目①  通学路・生活道路におけるこどもを始めとする歩行者の安全確保

通学路や生活道路での見守り活動の推進、「ゾーン30プラス」の整備推進、「生活道路は人が優先」という意識の浸透

重点項目②  「ながらスマホ」の根絶や歩行者優先等の安全運転意識の向上

運転中のスマホ操作禁止の徹底、信号のない横断歩道での歩行者優先(一時停止義務)の遵守

重点項目③  自転車・特定小型原動機付自転車の交通ルールの理解・遵守の徹底

自転車の青切符制度への対応、電動キックボード等との安全な共存ルールの理解

重点項目①  通学路・生活道路におけるこどもを始めとする歩行者の安全確保

 4月は新学期が始まり、子どもたちの通学路での歩行が活発になる時期です。歩行中のこどもの死傷者数は、新学期が始まる4月から6月にかけて増加する傾向にあり、通学路・生活道路における歩行者の安全確保はまず取り組むべき課題です。

 推進要綱では、通学路での見守り活動の推進に加え、「生活道路は人が優先」という意識を社会全体に浸透させることが求められています。具体的には「ゾーン30プラス」の整備推進や、通学路交通安全プログラムに基づく点検・対策の推進が掲げられています。

 企業にとっても、営業車両や配送車両が生活道路を「抜け道」として使用していないか、通学時間帯に通学路を走行していないかなど、自社の運行ルートの見直しが求められるポイントです。

重点項目②  「ながらスマホ」の根絶や歩行者優先等の安全運転意識の向上

 運転中のスマートフォン操作による「ながらスマホ」は、前方不注意を招く極めて危険な行為です。スマホ画面を2秒間注視した場合、時速60kmで走行中であれば約33m(車両約8台分)を「目を閉じたまま走る」のと同じ状態になります。

 また、信号のない横断歩道における歩行者優先(停止義務)が依然として十分に守られていない現状も課題です。JAFの調査によれば、信号のない横断歩道で歩行者がいても一時停止する車の割合はまだ約5割程度に留まっています。

 「ながらスマホ」の罰則強化(反則金の引き上げ・免許停止処分の対象拡大)はすでに施行されており、企業としても社内規定の見直しと従業員への周知徹底が不可欠です。

重点項目③  自転車・特定小型原動機付自転車の交通ルールの理解・遵守の徹底

 電動キックボードをはじめとする特定小型原動機付自転車の普及に伴い、自動車と自転車・新モビリティが混在する交通環境が急速に広がっています。

 2026年4月1日には自転車の交通違反に対する反則金制度(いわゆる「青切符」)が導入され、信号無視や一時停止違反、酒気帯び運転といった違反に対して、自動車と同様の反則金が科されるようになりました。

 企業にとっての注意点は2つあります。1つ目は、自動車を運転するドライバーとして、自転車や電動キックボードとの安全な共存を意識した「防衛運転」の指導が必要なこと。2つ目は、従業員が通勤や業務で自転車や新モビリティを利用している場合、賠償責任保険への加入義務化やヘルメット着用の推奨など、社内規定の整備が求められることです。

NCSワンポイントアドバイス

今回の重点項目には、道路交通法の改正ポイント(自転車の青切符制度や生活道路の法定速度30km/h引き下げなど)が深く関わっています。
改正内容や対策は別コラム【2026年法改正】自転車青切符・生活道路30キロ制限、企業管理者が知るべき「リスクと対策」で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

【今からでもできる】具体的な対策とは?

具体的な安全対策とは

 ここからは、2026年春の3つの重点項目に対応した、企業・自治体が明日からでも実行できる具体的な対策を紹介します。

通学路・生活道路での安全確保に向けた対策

運行ルートの再設定

業務車両が生活道路や通学路を「抜け道」として日常的に使用していないか、改めて確認しましょう。通学路の抜け道利用は原則禁止とし、安全なルートを社内で共有・標準化することが基本です。テレマティクスを導入している場合は、走行データからルートの実態を可視化できるため、ルール違反の早期発見にも役立ちます。

朝礼・点呼での注意喚起

特に時間に追われがちな営業車両や配送車両のドライバーに対して、運動期間中は点呼や朝礼の場で通学路・生活道路での安全運転を重点的に呼びかけましょう。「スケジュールにゆとりを持つ=安全マージンを確保する」という意識づけが重要です。

「ながらスマホ」根絶と歩行者優先に向けた対策

社内規定の再徹底

運転中のスマートフォン操作(ハンズフリー通話の扱いを含む)について、社内ルールと違反時の処分を改めて明文化し、全ドライバーに周知しましょう。「ながらスマホ」は厳罰化されている一方で、業務上の電話やナビ操作との線引きが曖昧なまま運用されている企業も少なくありません。明確なルール整備を行うことで、社員が安心して業務にあたる体制を作ることができます。

ドラレコ映像を用いたKYT(危険予知トレーニング)

自社や業界で過去に発生したヒヤリハット映像を活用し、横断歩道での見落としや歩行者の飛び出しリスクを具体的にイメージさせる教育が効果的です。座学だけでは伝わりにくい「かもしれない運転」の重要性を、映像を通じて自分事として共有しましょう。

 「ながらスマホ」も含まれる安全運転義務違反とその防ぎ方については、こちらのコラムで詳しく解説しています。
「安全運転義務違反」とは?企業が知るべきリスクと対策の基本

自転車・新モビリティのルール遵守・共存に向けた対策

防衛運転指導

出会い頭や左折時の巻き込み事故を防ぐため、交差点での完全な一時停止と死角の目視確認を改めて徹底指導しましょう。特に、電動キックボードは音が小さく接近に気づきにくいため、これまで以上の注意が必要です。「相手が止まるだろう」ではなく「飛び出してくるかもしれない」という防衛運転の意識を浸透させることが事故回避の鍵です。

通勤ルールの見直し

従業員が通勤や業務で自転車・電動キックボードを利用している場合、社内規定の整備が必要です。具体的には、賠償責任保険への加入義務化、ヘルメット着用の推奨(努力義務)、駐輪場所のルールなどを定め、違反時のリスクも含めて周知しましょう。特に青切符制度の導入により、従業員個人の自転車違反が反則金の対象となることを周知することが重要です。

NCSワンポイントアドバイス

指導の際には、いかに「自分ごと」として受け取ってもらうかが成功のカギとなります。実際に社員が体験した事故・ヒヤリハット映像だと、自分たちの見慣れた道が表示されるなど社員がより自分ごととして受け止めやすいというメリットがあり、文章や口頭での指導よりも効果的に伝えることができるでしょう。

NCSのソリューション紹介

NCSのソリューション紹介

 ここまで解説してきた対策を効果的に実行するためには、属人的な管理だけでは限界があります。テクノロジーを活用した「見える化」と、専門家の知見に基づく「仕組みづくり」が、持続的な安全管理の鍵を握ります。

テレマティクスで「見えないリスク」を可視化

 「ながらスマホをしていないか」「生活道路で速度超過していないか」「交差点で一時停止しているか」。これらは、管理者が同乗していない限り把握できないリスクです。

 NCSのドライブドクターは、テレマティクス連携のドライブレコーダーにより、こうした「見えないリスク」を客観的なデータとして可視化します。AIカメラによるながらスマホのリアルタイム検知・警告や、速度超過・急ブレーキなどの危険挙動の自動記録により、管理者は日々の運転実態を管理画面で即座に把握できます。

 さらに、アルコールチェックの記録や日常点検結果の一元管理にも対応しており、安全運転管理者の業務負担を大幅に軽減します。

データに基づく個別指導とプロのコンサルティング

 テレマティクスで取得したデータを活用し、ドライバー個人の運転傾向や癖に合わせた効率的な指導が可能です。感覚的な注意ではなく、「あなたは〇月〇日の△△交差点で速度超過していた」という具体的な事実に基づくフィードバックは、本人の納得感と行動変容を促します。

 NCSでは安全運転講習プログラム「SDS(セーフティ・ドライバーズ・サポート)」を通じて、eラーニング、危険予測トレーニング(KYT)、座学・実車講習などの多面的な教育メニューを提供しています。社内規定の策定から教育の実施、運用の定着支援まで、企業・自治体の安全管理DXをワンストップでサポートする「伴走型」の支援が、NCSの強みです。

まとめ

 2026年春の全国交通安全運動では、通学路・生活道路での歩行者保護、ながらスマホの根絶、自転車・新モビリティとの安全な共存という3つの重点項目が掲げられています。いずれも企業の車両管理に直結するテーマであり、「他人事」では済まされません。

 キャンペーン期間を単なる「周知」で終わらせず、運行ルートの見直し、社内規定の再整備、ドラレコ映像を活用した教育、テレマティクスによる運転の見える化など、実効性のある対策に踏み込みましょう。

 NCSでは、テレマティクスによるデータ活用と、SDSによるプロの安全運転コンサルティングを組み合わせた包括的な支援を行っています。自社の課題に合わせた安全管理体制の構築に、ぜひご活用ください。