コラム

車両管理システム導入判断の4つの基準と選び方のポイント

コスト最適化 働き方・コンプライアンス 安全運転・事故削減 業務効率化 法令対応 車両管理高度化
車両管理システム導入判断の4つの基準と選び方のポイント

煩雑な日報作成、複雑化する法令対応。紙やExcelでの車両管理に限界を感じていませんか?この限界を解決するツールが車両管理システムです。ただ、車両管理システムは種類も機能も多く、自社に合う製品を選ぶのは困難です。本記事では、業務効率化を実現するため、システム導入を成功させる4つの判断基準と選び方のポイントを解説します。

車両管理システムとは?

車両管理システムを選んでいる男性

企業のコンプライアンス強化やDX推進が求められる中、社用車の管理体制を見直す動きが活発化しています。これは、紙やExcelによるアナログな管理では、日報作成の非効率さや法令対応の複雑化といった課題が顕在化しやすいためです。こうした課題を解決する手段として有効なのが「車両管理システム」です。本章では、まずシステムの基本的な役割と、導入が進む社会的な背景について解説します。

車両管理システムの役割

車両管理システムの主な役割は、社用車に関するあらゆる情報をデータ化し、一元管理することです。具体的には、車両の基本情報をまとめた車両台帳、日々の点検・整備記録、ドライバーが作成する運転日報を指します。

また、法令で義務化されたアルコールチェックの記録といった情報もシステム上で管理可能です。これにより、これまで紙やExcelで行っていた煩雑な業務が効率化され、管理者・ドライバー双方の負担を軽減します。同時に、記録漏れや入力ミスといったヒューマンエラーを防ぎ、正確で信頼性の高い車両管理体制を構築できます。

導入が進む背景

近年、車両管理システムの導入が急速に進む背景は、大きく2つ挙げられます。1つ目は、法令対応の厳格化です。特に2023年12月からアルコール検知器を用いたアルコールチェックが義務化され、安全運転管理者の記録・保存業務の負担が増大しました。
アルコールチェックの義務化については、こちらの記事で解説しています。
関連記事:白ナンバーのアルコールチェック|現場の負担解消にはテレマティクスサービスが有効

2つ目は、全社的なDX推進の流れです。理由として、紙やExcelでの非効率なアナログ管理から脱却し、業務全体の生産性を高めることに注目されている現状があります。車両管理は今や、企業の安全とコンプライアンスを支える中核業務と位置づけられています。

種類と主要機能

ドライブレコーダー

一口に車両管理システムと言っても、その種類は多岐にわたります。多くの製品の中から自社に最適なものを選ぶには、まず全体像を把握することが重要です。

本章ではシステムを「管理目的」と、車載器などの「機器構成」という2つの軸で分類しています。それぞれのタイプの特徴と、比較検討に欠かせない主要機能を解説し、システム選定の具体的なポイントをご紹介いたします。

目的別の3タイプ(管理目的)

車両管理システムは、解決したい課題や目的によって、主に以下の3つのタイプに分類できます。自社がどの段階の課題を解決したいのかを明確にするために、それぞれの特徴を表で比較してみましょう。

目的別の3タイプ比較表

台帳管理型
  • 主な目的・特長:車両情報のデータ化と事務作業の効率化

  • 主な機能例:車両台帳管理、点検・整備記録、リース・保険契約管理、車検・免許証更新アラート

  • 対象企業:紙やExcel管理から脱却したい企業、車両に関する事務作業の負担を減らしたい企業

運行管理型
  • 主な目的・特長:運行状況の可視化と業務効率化

  • 主な機能例:(台帳管理型の機能に加えて)
    運転日報の自動作成、走行ルート・走行距離の記録、燃費管理、稼働率の把握

  • 対象企業:ドライバーの日報作成の手間を省きたい企業、車両の稼働状況を把握しコストを最適化したい企業

テレマティクス型
  • 主な目的・特長:リアルタイムデータ活用による包括的な車両管理

  • 主な機能例:(運行管理型の機能に加えて)
    リアルタイム車両位置追跡(GPS)、危険運転検知(急加速・急ブレーキなど)、アルコールチェック記録連携、安全運転スコアリング

  • 対象企業:コンプライアンスを徹底し、事故を未然に防ぎたい企業、
    データに基づいた客観的なドライバー教育を行いたい企業、
    DX推進、車両管理全体を高度化したい企業

このように、目的別に3タイプは段階的に機能が高度化していくイメージです。

方式別の5タイプ(機器構成)

車両管理システムは、データを取得するための機器構成によってもタイプが分かれます。設置の手軽さだけでなく、取得できるデータの種類や精度、コストが異なるため、自社の車両や運用方法に最適な方式を選ぶことが重要です。

方式別の5タイプ比較表

OBD-Ⅱポート型
  • 特長:車両の自己診断用ポートに端末を接続
    エンジン回転数や燃料消費量など、高精度な車両情報を直接取得

  • メリット:配線作業が不要で設置が簡単、燃費など精度の高いデータを取得可能

  • デメリット:対応車種が限られる場合がある

  • 対象企業:正確な燃費や走行データを管理したい企業、
    営業車を多く保有する企業

シガーソケット型
  • 特長:シガーソケットから電源を取得するタイプ、
    GPSで位置情報などを記録

  • メリット:配線作業が不要で簡単に設置可能、レンタカーなどでも手軽に利用できる

  • デメリット:取得できる車両データは限定的、意図せず抜ける可能性がある

  • 対象企業:導入の手間とスピードを重視する企業、リース車両で利用したい企業

アプリ型
  • 特長:ドライバーのスマートフォンに専用アプリをインストールし、スマホのGPS機能でデータを取得

  • メリット:専用端末が不要で最も低コスト、すぐに利用開始できる

  • デメリット:スマホの充電や電波状況に影響される、ドライバーのプライバシーへの配慮が必要

  • 対象企業:初期費用を抑えたい企業、従業員の私有車を業務利用する場合

ドライブレコーダー型
  • 特長:ドライブレコーダーと車両管理機能が一体化。走行データと映像を紐づけて記録・管理

  • メリット:事故や危険運転の状況を映像で確認できる、映像に基づく具体的な安全運転指導が可能

  • デメリット:他のタイプに比べ導入コストが高い、取り付け工事を要する場合がある

  • 対象企業:事故削減や安全運転教育を徹底したい企業、客観的な証拠を残したい企業

デジタコ型
  • 特長:デジタルタコグラフが一体化した仕様、
    法定3要素(速度・時間・距離)の運行記録を自動で取得・保存

  • メリット:法令遵守(改善基準告示対応)に直結、詳細な運行データを分析できる

  • デメリット:機能が運送業向けに特化している、導入・運用コストが高額

  • 対象企業:トラック運送事業者など、デジタコの装着が義務付けられている企業

主要機能と比較ポイント

車両管理システムには、業務効率化や安全確保を実現するための多彩な機能があります。自社の課題解決に必要な機能を見極めるために、主要な機能の概要と、導入時に確認すべき比較ポイントを表にまとめました。

主要機能と比較ポイント一覧

リアルタイム追跡・運行管理
  • 機能の概要:GPSを利用して車両の現在位置や走行ルート、訪問先などを地図上でリアルタイムに把握

  • 導入時のチェックポイント:
    ・GPSの測位精度や更新頻度は十分か
    ・走行履歴はどのくらいの期間保存できるか

燃費・稼働管理
  • 機能の概要:給油記録や走行距離データから燃費を自動計算し、車両ごとの稼働率(アイドリング時間含む)を分析

  • 導入時のチェックポイント:
    ・燃費計算の精度は高いか
    ・車両ごとのコスト分析や稼働率の最適化につながるか

安全運転支援・分析
  • 機能の概要:急加速、急ブレーキ、急ハンドルなどの危険運転を検知・記録し、ドライバーごとにスコアリングして評価

  • 導入時のチェックポイント:
    ・危険運転の検知精度は適切か
    ・ドライバーへのリアルタイム警告機能はあるか
    ・個別のドライバー教育に活用できるレポートか

点検・整備管理
  • 機能の概要:車両ごとの点検時期や車検、保険の満了日を管理。
    期限が近づくとアラートで通知することで、整備漏れを予防。

  • 導入時のチェックポイント:
    ・アラート通知を柔軟にカスタマイズできるか
    ・整備履歴やコストを一元管理できるか

法令対応
  • 機能の概要:運転日報の自動作成や、アルコール検知器と連携したアルコールチェック記録の保存など、コンプライアンスをサポート。

  • 導入時のチェックポイント:
    ・自社の運用に合わせた日報フォーマットか
    ・アルコールチェック義務化の要件(記録・保存)を満たすか
    ・将来の法改正にもアップデートで対応可能か

レポート・データ分析
  • 機能の概要:蓄積された各種データを集計し、月次レポート作成を自動化。車両管理全体の状況を可視化。

  • 導入時のチェックポイント:
    ・求めるレポートを簡単に作成・出力できるか
    ・データのエクスポート形式は何か(CSVなど)
    ・レポートはグラフなどで視覚的に分かりやすいか

自社の「目的」に立ち返り、必須機能や業務効率化につながる機能を吟味し、優先順位をつけて検討しましょう。

よくある導入失敗とその原因

悩んでいる人

車両管理システムは、業務効率化やコンプライアンス強化につながる強力なツールです。しかし、計画なく導入した結果、「現場で全く使われない」「データが活用できずコストだけが増えた」といった失敗に終わるケースも少なくありません。

その原因には、導入前の準備不足や関係者と現場に生じる認識のズレが潜んでいます。本章では、よくある失敗パターンとその原因を解説します。

目的が曖昧なまま導入

車両管理システム導入の失敗で多いのが、目的が曖昧なまま進めてしまうケースです。「他社も導入しているから」「便利そうだから」といった理由だけで導入を決めると、現場が使いこなせず運用が定着しません。

目的が不明確なため、どの業務を改善したいのか、どの指標で効果を測るのかが定まらず、結果としてシステムは形だけが残る状態になります。導入の成否は、最初に目的を明確にできるかどうかにかかっています。

現場との運用ギャップ

システム導入後にありがちな落とし穴が、現場との運用ギャップです。例えば、操作画面(UI)が複雑で入力項目が多すぎると、ドライバー側に「また余計な手間が増えた」といった抵抗感が生まれます。実際、操作性が悪ければ「誰も使わない」「適当に入力する」という状況に陥りがちです。

結果としてデータの精度が落ち、出てくる数字に信頼が持てず、運用が形骸化してしまいます。導入時には、現場に即した操作性と定着施策が不可欠です。

導入後のサポート不足

システムを導入した後でも、サポート体制が弱いと運用が停滞してしまいます。教育体制が整っておらず、担当者が異動・退職したタイミングで運用が止まったというケースもあります。

また、アップデート対応や問い合わせ窓口が決まっていないと「何かおかしい」「誰に聞けばいいのか?」といった現場の疑問がすぐに解決できず、結果として使われなくなります。選定時には「サポート体制の充実」が重要な選定ポイントのひとつといえるでしょう。

選ぶための判断基準

データに基づく打ち合わせをする会社員

前章で述べた車両管理システムの導入失敗を避け、投資対効果を最大化するには、明確な判断基準が不可欠です。

そこで本章では、数ある製品の中から自社に本当にフィットするシステムを選択するための「4つの判断基準」を具体的に解説します。この基準に沿って検討することで、導入後のミスマッチを防ぎ、確実な成果へとつなげましょう。

① 目的を明確にする

車両管理システムを選ぶ上で最も重要な最初のステップは、「何のために導入するのか」という目的を明確にすることです。

まずは自社の課題を「日報作成の手間を省きたい(業務効率化)」「ガソリン代や保険料を抑えたい(コスト削減)」「事故につながる危険運転を減らしたい(安全運転)」「アルコールチェック記録を徹底したい(法令対応)」といったレベルまで具体的に掘り下げましょう。これらのうち、最優先の課題を定めることが、最適なシステムを選ぶ上で軸となります。

② 現場が運用できるかを見極める

優れたシステムも、現場のドライバーや管理者が使いこなせなければ意味がありません。特にドライバーにとっては「日報が自動生成され、数タップで承認が完了する」など、日々の入力工数がどれだけ削減されるかが重要です。管理者側も、管理画面が直感的で分かりやすい、操作しやすいかを確認しましょう。

導入前には必ず無料トライアルやデモを活用し、ITに不慣れな従業員も含めて操作性を試すことが不可欠です。現場の負担を増やさず、誰でも無理なく継続できるシステムの選択が導入成功の鍵になります。

③ 他システムとの連携性

車両管理システムを単体で利用するだけでなく、既存の業務システムと連携させることで、さらなる業務効率化が期待できます。例えば、勤怠管理システムとのデータ連携は、運転時間から労働時間を自動算出できます。また、経費精算システムと連携させれば、給油記録や走行距離に基づく交通費申請がスムーズです。さらに、アルコール検知器の測定結果を自動で取り込めば、記録業務の負担が大幅に軽減されるでしょう。

こうした連携の最大のメリットは、同じ情報を何度も入力する「二重入力」の手間をなくし、ヒューマンエラーを防げる点です。また機能の拡充(API連携)やCSV出力に対応しているかなど、既存システムとの親和性も確認しましょう。

④ サポート・法改正対応

システムは導入して終わりではありません。長期的な運用を見越して、ベンダーのサポート体制を吟味することが不可欠です。導入時の設定サポートはもちろん、運用中の疑問やトラブルに迅速に対応してくれる窓口の有無を確認しましょう。

また、アルコールチェック義務化のように、関連法令は定期的に改正されます。将来の法令対応にシステムが自動アップデートで追従できるかも、コンプライアンスを維持する上で重要な導入判断基準です。

車両管理システムで得られる主なメリット

メリットを手に入れる人

車両管理システムの導入検討で、最も重視されるのが費用対効果です。システムは単なる「コスト」ではなく、将来の経費を削減する「投資」と捉えられ、その効果は多岐にわたります。例えば、燃費の改善による燃料費の削減や、事故リスク低減による保険料の抑制、日報作成の自動化による人件費の圧縮などです。本章では、システム導入がもたらす具体的なメリットを4つの視点から詳しく解説します。

コストの削減

車両管理システムの導入は、多角的なコスト削減に貢献します。例えば、リアルタイム追跡(GPS)機能で最適なルートを指示したり、アイドリング時間を可視化したりする仕組みです。これにより運行時間の短縮と燃料費の削減につながります。

また、運転日報作成の自動化をはじめ、データの取得・管理が簡素化されることで、ドライバーと管理者双方の事務作業が大幅に軽減されます。この業務効率化は、人的リソースをより生産性の高い業務へ振り分けることを可能にし、実質的な人件費の削減にもつながるでしょう。

危険運転の可視化

事故防止は安全運転管理者の重要責務ですが、ドライバーの運転傾向を客観的に把握し指導することは容易ではありません。車両管理システムは、急加速や急ブレーキ、速度超過といった危険運転をリアルタイムで検知し、データとして記録・可視化します。これにより、「誰が、いつ、どこで」危険な運転をしたかが一目瞭然です。

この客観的なデータを用いることで、勘や経験に頼らない具体的なドライバー教育が可能になり、個々の運転癖の改善を促せます。

車両台数の最適化・保険料の低減

車両管理システムにより、車両ごとの稼働率や走行距離といった実態データを正確に把握できます。これにより、「ほとんど使われていない車両」や「非効率な車両運用」が明確になり、客観的なデータに基づいて保有車両台数の最適化が可能です。

また余剰車両を減らすことで、車両費用や駐車場代、税金といった固定費を大幅に削減できます。さらに、安全運転の推進は事故発生リスクそのものを低減させ、結果として自動車保険料の低減にもつながるでしょう。

運転日報業務の効率化

ドライバーと管理者双方にとっての負担が、手書きやExcelでの運転日報作成・管理業務です。車両管理システムを導入すれば、走行日時や距離、訪問先といった記録が自動で反映され、日報が自動生成されます。ドライバーは内容を確認してスマートフォンから提出するだけで完結し、管理者もデバイスで一括承認できるため、提出のための帰社や紙の回収・保管が不要になります。

株式会社ベスト・ケアー様では、アルコールチェック義務化への対応として NCSドライブドクター運行支援アプリ を導入し、記録管理にかかる負担が大幅に軽減されました。これまで紙への手書き記録を保管・確認・集計するために費やしていた手間が削減され、本来の業務に時間を充てられるようになりました。また、丁寧な導入支援により現場への浸透もスムーズに進み、安全運転への意識向上にもつながっています。
代表取締役坂本和徳氏の写真

詳しい導入の詳細についてはこちら
アルコールチェック義務化への対応をきっかけに、安全運転を「企業文化」として根付かせる

まとめ

本記事では、車両管理システムの種類や機能から、導入失敗を避けるための4つの判断基準、導入のメリットを解説しました。自社の目的を明確にし、現場が無理なく運用できる車両管理システムを選ぶことが成功の鍵です。
NCSの車両管理システムは、高精度なデータ取得と手厚いサポート体制で、貴社の業務効率化とコンプライアンス遵守を強力に支援します。