Starlink BusinessとNTTドコモビジネス
Starlink Business(画面中央)の導入を担当するNTTドコモビジネスの松崎史晃さん(左)と内田紘太さん

日本カーソリューションズ株式会社(以下、NCS)とNTTドコモビジネス株式会社(旧NTTコミュニケーションズ株式会社 、以下 NTTドコモビジネス)は、NTTドコモビジネスが提供する高速・低遅延の衛星通信「Starlink Business」とモビリティを組み合わせた新たなビジネス領域の開拓を進めています。Starlink Businessの技術的優位性とモビリティとの融合がもたらす価値、そして今後の事業化に向けた取り組みについて、導入を統括するNTTドコモビジネスのビジネスソリューション本部、松崎史晃さんと内田紘太さんに伺いました。

いつでもどこでも高速・低遅延の通信が可能に

Starlinkの衛星通信と従来の衛星通信の違いを表した図
Starlinkの衛星通信と従来の衛星通信の違い(NTTドコモビジネスオフィシャルサイトより)

Starlink Businessとは、スペースX社が開発した低軌道の衛星「Starlink」を活用したインターネットサービスです。従来型の衛星通信は、高度約3万6000キロの軌道を周回する静止衛星を利用しているため、データの往復時間が長く、通信速度の低下や遅延が課題となっていました。一方、Starlink Businessは、高度550キロの低軌道を周回する数千機の小型衛星を活用することで、高速・低遅延の通信を実現しています。「従来の衛星通信サービスでは音声通話やテキストメッセージの送受信がメインでしたが、Starlink Businessは動画の閲覧やオンライン会議など、ビジネス利用にも十分対応可能です」(松崎さん)。

Starlink Businessを導入すると、携帯電話キャリアの電波が届きにくい「不感地帯」や光回線が使用できない山間部でもインターネット通信が可能です。また、災害時に地上の通信に大きな被害が出た場合でも、救助や医療活動、インフラの復旧支援など、災害対応に必要な通信手段を確保できるため、BCP対策としても活躍します。内田さんは「このように様々な状況でのStarlink Business活用を加速するため、NTTドコモビジネスは利用現場への移動手段であるモビリティとの組み合わせに注目しています」と話します。

Starlink Business×モビリティで手軽に通信環境を構築

Starlink BusinessとBPO対策実演図
左上からルーター、アンテナを手前の電源にケーブルで差し稼働させている
車体の上に機器を乗せて実験
車体の上に機器を置いたイメージ写真

Starlink Businessで通信するためには、受信機アンテナを地上に設置し、ルーターと電源にケーブルで接続します。Starlink Businessをクルマで持ち運び、移動先の現場で通信環境を構築することも可能です。また、あらかじめ車両のルーフ上にアンテナを搭載しておけば、移動先での設置作業が不要となり、素早く通信を利用することができます。さらに、電気自動車(EV)にStarlink Businessを搭載することで、EVのバッテリーを電源として活用することも可能。「移動可能な電源+通信車両」として、電源がない場所でも通信の確保を実現します。NCSとNTTドコモビジネスは、ユーザの利用用途や目的に合わせて、様々な活用方法を提案できると考えています。

三輪電動バイク「ジャイロキャノピーe」
本田技研工業株式会社の三輪電動バイク「ジャイロキャノピーe」に搭載も可能

なお、Starlink Business一式は、三輪電動バイク「ジャイロキャノピーe」のリアトランク※に搭載できることも確認済みです。三輪ならではの小回りを生かした活用方法にも注目しています。

  • リアトランクはメーカー推奨品のw540×d610×h610(mm、内寸)を使用しています。

災害時にも通信を確保、安心を守る

Starlink Businessの一番の用途は「災害時に混乱なく情報を伝達すること」であると松崎さんと内田さんにご説明いただきました。松崎さんは2024年の能登半島地震の際に、被災地でStarlink Businessによる復旧支援を経験されました。携帯電話すら使えない状況で、情報がまったく入らず大変不安だったとの被災者の声を聞き、「安心して生活をするために、通信は欠かせないもの」との想いを強くしたといいます。

被災地での通信の重要性を語る
被災地で通信の重要さを改めて実感したと話す松崎さん

また、救助や医療に当たった医師や救命士が、「移動の足、通信、電源は被災地での活動に必須」と強く訴えていたことも松崎さんの心に強く残りました。このような災害時における支援活動の備えとして、EVとStarlink Businessの活用が期待されています。NTTドコモビジネスは、迅速・正確な判断が求められる災害の現場でも、人命の救助や復旧支援に貢献できると考えています。

電気自動車(EV車)とStarlink Business、EVバイク
EVからStarlink Businessに電気を供給

通信×移動で広がる未来の可能性

通常時においてもStarlink Businessとモビリティは私たちのビジネスや生活を便利に豊かにします。例えば、不感地帯の現場で素早く通信環境を構築することで、建設工事の状況や構造物の保守整備データ送信、遠隔地からの指示受信など、リアルタイムでの通信による業務効率化に貢献します。また、山間の住宅を巡る移動販売車での電子決済対応など、地域の課題解決にも活躍します。NTTドコモビジネスは「不感地帯でも一般家庭と同等のインターネット通信が確保できました。オンライン会議も快適に行えます」(内田さん)と確認済みです。

通信の品質に自信を持つ
「通信の品質はかなり良い。早期の事業化を目指す」と内田さん

また、放送局の無線中継バックアップとして、Starlink Businessを活用することも想定しています。「混雑によって通信がつながりにくくなるイベント会場で通信環境の改善に役立てるといった使い方もユーザから提案されています」(松崎さん)。

今年度に共同実証、早期の事業化見込む

通信とモビリティを掛け合わせた活用はNTTドコモビジネスが注力する領域の一つ。2025年度にユーザと車載Starlink Businessを使った共同実証を行ってユースケースを探り、2025年度から2026年度内にパッケージ化して事業化する計画です。NTTグループの強みを生かし、モバイルを活用したソリューション開発も考えています。

Starlink Businessとモビリティをパッケージ化

NTT関連企業であるNCSはNTTドコモビジネスとの協力体制が整っています。「NTTドコモビジネスの営業担当者がStarlink Businessと車両をセットで販売し、他社と差別化する形を考えている」と松崎さんにご紹介いただきました。BCP対策が必要とされる行政や医療機関、通信環境に課題を持つ企業に対し、Starlink Businessとモビリティの活用を提案する計画です。

Starlink Business×モビリティの早期普及を図る
「NCSと協力し、Starlink Business×モビリティの早期普及を図る」とお二人

また、NCSとしてもモビリティとStarlink Businessの組合せは新たなビジネスチャンスと捉えています。Starlink Business導入のイニシャルコストは1台40万円程度。導入コストを抑えるため、車両とStarlink Businessをパッケージにしたリース商品の提供を検討し、顧客のニーズに応えるソリューションの提供を目指しています。

NCSは、パートナーとともに新たな価値を創出し、モビリティサービスを通じてお客さまに寄り添い、持続可能な社会を創造してまいります。