2024.8.2

白ナンバーのアルコールチェック|現場の負担解消にはテレマティクスサービスが有効

カテゴリー:コラム
テーマ:車両管理高度化/働き方改革・コンプライアンス/業務効率化/法令対応

自家用車両(以下、白ナンバー)でのアルコールチェックが義務化されてから1年以上が経過し、実際に現場のアルコールチェックの対応はどのように進められているのでしょうか。
本記事では、義務化の背景、業務フロー、現場の課題、そしてテレマティクスサービスによる解決策を紹介します。安全運転管理の質向上を目指す事業者の皆さまにお役立ていただける内容です。

1. 【おさらい】アルコールチェック義務化とは

2022年4月1日の改正道路交通法の施行により、白ナンバー事業者にも安全運転管理者によるアルコールチェックが義務付けられました。本記事では、義務化の背景や法改正の流れ、対象となる事業所、そしてアルコールチェックを怠った場合の罰則について解説します。

●義務化された背景

アルコールチェック義務化の背景には、段階的な法規制の強化があります。
2011年、まず運送業や旅客運送業等の車両(以下、緑ナンバー)を保有する事業所に対し、アルコールチェッカーの設置と運転者のチェック実施が義務付けられました。

転機となったのは2021年6月、千葉県で発生した重大な事故です。白ナンバーのトラック運転手による飲酒運転で、下校中の児童5人が死傷する事故が起きました。

この事故を受け、政府は2022年4月から白ナンバー車両の運転者にも運転前後のアルコールチェックを義務付けました。

●道路交通法改正の流れ

道路交通法改正の流れを見てみます。

2011年4月に緑ナンバー車両所有の事業所に対し、アルコールチェッカーの設置と運転者のチェック実施が義務付けられました。その後2022年4月に、白ナンバー車両にも運転前後の目視によるアルコールチェックが義務化されました。

安全運転管理者は、運転者の酒気帯びの有無を目視等で確認し、その記録を1年間保管することが求められます。
記録には確認者名、運転者名、車両情報、日時、確認方法、酒気帯びの有無などの8項目です。

そして、2023年12月にはアルコールチェッカーによる確認と、チェッカーの常時有効保持が追加で義務付けられました。

●義務化の対象は「安全運転管理者」を設置する事業所

アルコールチェック義務化の対象となるのは、安全運転管理者を選任する必要がある事業所です。
具体的には以下の条件を満たす事業所が対象となります。

車両台数は事業所ごとにカウントされ、軽自動車なども対象です。
50cc以上の自動二輪車は0.5台としてカウントします。

安全運転管理者の選任には、20歳以上で2年以上の運転管理実務経験などの要件があります。選任していない場合は50万円以下の罰金が科される可能性があります。アルコールチェック義務化に対応するため、該当する事業所は安全運転管理者の選任とアルコールチェック体制の整備が必要です。

●アルコールチェックを怠るとどうなる?

アルコールチェックを怠ると、安全運転管理者の業務違反となり、公安委員会から是正措置命令が出される可能性があります。直接的な罰則規定はありませんが、命令に従わない場合は50万円以下の罰金が科される恐れもあり、飲酒運転への自主的なチェック体制が必要です。

また、従業員が飲酒運転をした場合、従業員が所属する事業所の代表者や運行管理責任者にも同様の処罰が科されます。

さらに、事業所のマネジメント不足として社会的信用を失うリスクもあります。アルコールチェックは事故防止だけでなく、事業所のリスク管理の観点からも確実に実施することが重要です。

2. アルコールチェックの業務フロー

アルコールチェックは1日2回の運転前後実施する規定です。安全運転管理者が運転者の状態を目視等で確認し、アルコールチェッカーでチェックを行います。目視確認は原則として対面で行い、運転者の顔色や表情、呼気のにおい、声の調子などから判断します。対面実施が難しい場合はビデオ通話や電話等での確認も可能です。

1日に複数回運転する場合、業務開始前か出勤時と、業務終了時か退勤時の2回実施で完了になります。
アルコールチェッカーは事業所に常備し、管理・保守しますが、直行直帰や出張などの場合は従業員が携行します。

また、アルコールチェッカーと目視確認の結果は記録して1年間保存する必要があります。記録・保存方法は紙・電子データのどちらでも可能です。

3. 義務化から1年以上経って見えてきた「業務負担」という課題

白ナンバーでのアルコールチェックが義務化されてから1年以上が経過し、多くの企業で浮き彫りになってきた課題は業務負担です。特にアルコールチェッカーの導入や使用方法の共有、業務前後の安全運転管理者による目視確認など、新たな業務が加わったことで負担が増加しています。ここでは、負担となっている業務内容を解説していきます。

●負担になっている業務①:アルコールチェッカーでの酒気帯び状態の確認

アルコールチェッカーでの酒気帯び状態の確認が、事業所にとって大きな業務負担となっています。
具体的には以下の業務が挙げられます。

アルコールチェッカーを適切に管理するほか、正しく使用して測定結果を安全運転管理者に伝える必要があります。運転前に必ず実施するため、すぐに出発できないなども現場の負担となっています。

●負担になっている業務②:酒気帯び状態の目視での確認

アルコールチェックの目視確認も安全運転管理者にとって大きな業務負担となっています。
負担業務の主な内容は以下の通りです。

目視での確認では特に安全運転管理者の負担が大きく、車両や運転者の人数が多いほどその負担は増えていきます。

●負担になっている業務③:確認結果と運転日誌の記録管理

企業にとって負担の大きい業務は、アルコールチェックの確認結果と運転日誌の記録管理も含まれます。主な負担業務は以下の通りです。

記録結果を1年間保管する必要があるため、紙やエクセル等での手動管理ではデータ紛失の危険性がどうしても高くなってしまいます。また、データを分析等に活用するのも容易ではないため、現場の傾向や課題を発見しづらいという問題もあります。

4. 業務負担の解消には「テレマティクスサービス」が有効

アルコールチェックの業務は、企業にとって大きな負担となっています。特に、対面での確認が原則とされているため、テレマティクスサービス※による完全な効率化は難しい面があります。しかし、その他の面では大幅な業務改善が可能です。

※GPSなどの機器を用いて、道路情報や車両の運行情報をリアルタイムでやり取りすることができるサービス。

ここでは、NCSが提供するテレマティクスサービス「NCSドライブドクター」のオプションサービス 「NCSドライブドクター運行支援アプリ」を例に、アルコールチェックの作業や記録の負担軽減方法を紹介します。
このシステムは、アルコールチェッカーの情報を簡単に登録でき、記録はクラウドで自動管理されます。これにより、安全運転管理者の負担が大幅に軽減され、より効率的な業務遂行が可能になります。

●アルコールチェッカーの情報を簡単に登録できる

「NCSドライブドクター運行支援アプリ」では、運転者がスマートフォンでアルコールチェッカーの測定値を撮影します。画像認識技術で撮影画像からアルコールチェッカーの測定値を自動認識するため、簡単で確実な記録が可能です。

さらに、測定結果の画像はエビデンスとして保存できるため、後からの確認もできます。車両の日常点検もスマートフォンアプリから簡単に入力・登録できるようになり、紙の記録と比べて格段に管理しやすくなるでしょう。

管理者側では、Web画面上で登録された記録を確認・承認することができ、データの一元管理が可能です。これにより、運転者と管理者双方のアルコールチェックの業務負担が軽減され、より確実で効率的な安全運転管理が期待できます。

●アルコールチェック以外の安全運転管理者の業務も効率化できる

テレマティクスサービスの導入は、安全運転管理者のアルコールチェック以外の業務効率の向上をサポートします。

例えば、NCSが提供する テレマティクスサービス「NCSドライブドクター」 は運行中の車両の位置情報や走行軌跡を地図上で把握できるため、効率的な車両管理が可能になります。また、ドライバーの運転行動を分析し、危険運転の傾向を特定することで、的確な安全運転指導ができます。

さらに、運転日報や点検記録などの書類作成を自動化することで、管理者の事務作業の負担を軽減します。
事故発生時には、即座に状況を把握し、迅速な対応ができるでしょう。

このように、テレマティクスサービスは安全運転管理者の幅広い業務を効率化し、より効果的な安全管理を実現する強力なツールとなるでしょう。

5. まとめ

アルコールチェック義務化から1年以上が経ち、多くの企業で対応が進んでいますが、約7割の企業が100%実施できていないのが現状です。最大の課題は安全運転管理者とドライバーの業務負担です。

この課題を解決する有効な手段として、テレマティクスサービスが注目されています。
「NCSドライブドクター運行支援アプリ」などのサービスを活用することで、アルコールチェック結果の簡易登録、クラウドでの自動管理ができ、業務負担の軽減につながるでしょう。また、危険運転の検知など、安全運転管理業務全般の効率化も可能になります。

法令遵守だけでなく、従業員の安全と企業のリスク管理の対策として、テレマティクスサービス導入の検討をおすすめします。

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