2023.8.28

検知器による「アルコールチェック義務化」がスタート!
法改正の内容と、企業が準備しておくポイントを解説

カテゴリー:コラム
テーマ:働き方改革・コンプライアンス/法令対応

 2022年4月1日より改正道路交通法が施行され、一定台数以上の自動車を使用する自動車の使用者(本解説では「企業」と読み替えます。)は、自動車の使用の本拠(本解説では「事業所」と読み替えます。)ごとに、目視などによる運転者のアルコールチェックが義務化されました。そして、2023年12月1日からはアルコール検知器を用いたアルコールチェックの義務化が正式決定されました。
 今回は12月に施行される法改正の内容を紹介しながら、アルコールチェックを実施するポイントや、義務化に向けてどのような対応・準備が必要になるのかを解説します。

道路交通法改正により、白ナンバー車両のアルコールチェックが義務化

 運転中にスマートフォンやカーナビを注視・操作する「ながら運転」や、周囲の車の通行を妨害するなどの「あおり運転」など、危険運転行為による事故が後を絶ちません。こうした社会的な問題や道路交通をめぐる最新の情勢に応じて、道路交通法はこれまでに何度も改正されてきました。2022年4月に改正された道路交通法では、下記の条件のいずれかの条件を満たす企業の事業所を対象に、運転者のアルコールチェックが義務づけられました。

・乗車定員が11人以上の自動車を1台以上“業務で使用”している
・その他の乗用車(トラックを含む)を5台以上“業務で使用”している
※大型自動二輪車または普通自動二輪車はそれぞれ1台を0.5台として計算する

 「緑ナンバー」の社用車は2011年からすでにアルコールチェックが義務化されていましたが、これまで義務化されていなかった「白ナンバー」の社用車も義務化の対象となったことが大きな変更点です。

 緑ナンバーとは人や荷物を有償で運ぶ事業用自動車(トラック・バス・タクシーなど)のことで、白ナンバーは自社の従業員や荷物を自社の車両で運ぶために使用する車両を指します。今回の法改正により、一定台数以上の社用車を使用するメーカーの営業部門や、スクールバスなどを所有する幼稚園(保育園)などもアルコールチェック義務化の対象となる可能性が高いため注意が必要です。2023年12月に予定している改正内容をしっかり押さえて対応を進めていきましょう。

2023年の法改正で何が変わる?「アルコール検知器」を用いたチェックが必要

 ここからは2023年12月に施行予定の道路交通法施行規則について紹介します。2022年4月から義務化されている現行の施行規則と比較しながら見ていきましょう。

■第一段階:2022年4月1日から義務化されている内容(現行)
・運転前後の運転者の状態を目視等で確認し、酒気帯びの有無を確認すること。
・アルコールチェックした内容の記録を1年間保存すること。

■第二段階:2023年12月1日から義務化される予定の改正内容
・運転前後の運転者の状態を目視等で確認するとともに、アルコール検知器を用いて酒気帯びの有無を確認すること。
・アルコールチェックした内容の記録を1年間保存すること。アルコール検知器を常に正常に作動し、故障がない状態で保持しておくこと。

 第一段階(現行)では、運転前後の運転者に対して「目視」等でアルコールチェックを実施し、その記録を保存すれば問題ありませんでしたが、第二段階(2023年12月1日予定)からはアルコール検知器を用いてアルコールチェックを行う必要があります。さらに、アルコール検知器は点検を行い、いつでも使える状態にしておくことも義務化されます。

 検知器を用いたアルコールチェックの義務化は、当初2022年10月から施行される予定でしたが、世界的な半導体不足やコロナ禍の物流停滞などにより、十分な数の検知器を供給できないという理由で延期されたという経緯があります。しかし、2023年8月15日、警察庁は白ナンバー事業者に対するアルコール検知器の使用義務化規定を2023年12月1日から施行すると発表しました。施行までに期日があっても、アルコール機器の運用方法の策定や、社内体制の構築には時間を要します。早めに準備することをおすすめします。

アルコールチェックの運用方法や実施する際のポイントは?

 「12月の改正に向けてどんな対応を取れば良いのかわからない」「アルコールチェックの運用方法について悩んでいる」という方も多いと思います。ここでは、アルコールチェックの具体的な実施方法に関するお悩みにお答えします。


Q.アルコールチェックの回数・タイミングは?

道路交通法施行規則 第九条の十第6号によると、

運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器を用いて確認を行うこと。

とあります。つまり、アルコールチェックを行わなければならないのは、運転者が運転する前と後の計2回。タイミングとしては運転の直前・直後である必要はなく、業務の開始前や終了後、出勤時や退勤時に実施すれば問題ありません。


Q.対面でアルコールチェックできない場合の方法は?

アルコールチェックは、原則対面かつ目視で行わなければなりません。ただし、直行直帰や出張などが多い業種・業態ですと、対面での確認が難しいケースも多いと思います。そういった場合は、カメラ・モニターなどで安全運転管理者(本解説では「確認者」と読み替えます。但し、アルコールチェックについては、安全運転管理者以外の者が、安全運転管理者に代わって目視等ができることになっていますので、確認者には、代行者も含みます。)が運転者の顔色や応答する際の声の調子を確認し、アルコール検知器による測定結果を確認する方法や、携帯電話・業務無線などで運転者の声の調子を確認するとともに、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法も認められています。

ここでのポイントは、運転者と確認者が直接対話を行わなければならないという点です。社内の連絡にチャットツールを使用する企業も増えていますが、直接の対話という条件を満たしていないため、アルコールチェックとは認められません。


Q.アルコールチェックの記録方法や必要な項目など、運用方法を教えてほしい

アルコールチェックの記録方法に関して、現状では「紙」「データ」のどちらで記録しても問題ありません。コスト面や導入しやすさを考慮して手書きの記録簿を作成している企業も多いと思いますが、1年分のファイリング保存や記入漏れに対する差し戻しといった作業も発生するため、あまり効率的とは言えません。ドライバーの人数や社用車の台数が多いと、なおさら負担は大きくなります。運転者と確認者双方の負担を軽減するためにも、データでの運用をおすすめします。


また、アルコールチェックする際は、下記の項目を記録するようにしましょう。

・確認の日時
・確認者名
・運転者名
・自動車の自動車登録番号または識別できる記号、番号など
・確認の方法(アルコール検知器の使用の有無、対面でない場合は具体的な確認方法を記載)
・酒気帯びの有無
・指示事項(酒気帯びが認められた運転者に対する指示を記載)
・その他必要な事項

アルコールチェックの義務化に向けた対応・準備について

 アルコールチェックを行う上で最も重要なのが、統一したルールで運用していくこと。そして、その運用が社内に定着するまで指導を行っていくこと。記入方法が運転者によって異なったり、事業所ごとに独自のルールで運用していたりすると、管理が複雑になるばかりか、いざという時にデータを確認できないことも。飲酒運転の防止に万全を期すため、早期にアルコールチェックの体制や確認のフローを構築しましょう。また、運用が定着するまでは、社内・部署内で研修会を開催したり、上司・部下間で定期的なミーティングを行ったりするのもおすすめです。

 また、当然のことながらアルコールチェックの義務化の対象となる企業は、事前にアルコール検知器を準備する必要があります。「どのような検知器を購入すれば良いかわからない」という人も多いと思いますが、酒気帯びの有無を音・色・数値などにより確認できる機器であれば、メーカーや形の指定はありません。自社にとって使いやすい、携行しやすい機種を選びましょう。

 現在、さまざまなメーカーからアルコール検知器が販売されていますが、アルコール検知器と連動したスマホアプリ・テレマティクスサービスを活用すると、いつ、どこで、誰が検査したのかを遠隔で把握することができて便利です。記入漏れのリスクを低減しながら、運転者の手間を削減できるため、規模の大きい事業所であれば専用のアプリやシステムの導入も検討したいところです。

 また、実際に運用を始めていくと、現場サイドから「こういうケースにはどのように対応すべきか」といった疑問や質問が寄せられます。安全運転管理者がいない時の確認方法や緊急時の対応などは、必ずマニュアルに残しておきましょう。

 アルコール検知器を選ぶ際は、アルコールチェックの記録方法や実施体制および社内への浸透方法について相談できる企業(サービス)かという視点で見極めることも大切です。

まとめ:業務負担軽減と確実なアルコールチェックに貢献

 アルコールチェックの義務化に伴い、確認者と運転者の業務負担は大きくなると考えられます。両者の負担を軽減しながら、アルコールチェックを確実に行うための手段として、「NCSドライブドクター運行支援アプリ」をご利用いただいている企業様も増えています。

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