2023.11.1

【自社事例紹介】ISO39001の内容とNCSの道路交通安全のための取り組みを解説

カテゴリー:コラム
テーマ:安全運転・事故削減/法令対応

 警察庁によると、令和3年中に発生した交通事故の件数は約30万5,196件で、これによる死者数は2,636人、負傷者数は36万2,131人に上ります。自社の社員が交通事故の被害者・加害者になってしまうと、企業の受ける経済的損失は計り知れず、時には社会的信頼の失墜につながることも。今回は、交通事故による死亡・重症事故の削減を目指す国際規格ISO39001の概要を紹介しながら、クルマを扱う企業に欠かせない「道路交通安全のための取り組み」をNCS(日本カーソリューションズ)の事例とともに解説します。

国際規格ISO39001とは? 取得するメリットを解説!

 交通事故の削減は企業活動において重要な課題です。大切な従業員とそのご家族を守るため、また従業員が重大な事故を起こさないために、安全運転講習を実施したり、安全運転マニュアルを作成したりする企業も多いと思います。事故を減らすには、道路交通安全マネジメント体制を構築し、組織として交通安全に取り組むことが大切です。企業のリスクと社会的責任が問われる今、国際規格ISO39001に注目が集まっています。
 ISO 39001とは交通事故による死亡事故、重症事故の削減を目指す道路交通安全マネジメントシステムのことで、組織が取り組むべき事項を定めた国際規格です。2007年8月にスウェーデンにより新規提案が行われたことを始まりとして、2012年に正式発行されました。
 規格の対象となるのはトラックやバスなどの運輸事業者だけでなく、自動車メーカーや整備工場、自動車リース会社、駐車場を持つ商業施設など、クルマを扱うあらゆる組織で導入することができます。近年、クルマを扱う企業による重大事故が発生していることから、ISO39001の認証を取得する企業が増えています。
 ISO39001を取得することで、企業活動の中で道路交通安全にかかわるリスクを洗い出すと同時に、組織として実効性の高い予防措置を講じることができるようになります。またPDCAサイクルを徹底することで、安全運転に対する取り組みの体系化や従業員の意識向上が期待できるでしょう。

ISO39001の認証を取得するメリット

  • 交通事故の削減
  • 事故処理に要する人員と時間ロスの低減
  • 負傷などによる人的損失、車両の損壊などによる物的損失を軽減
  • 保険料や修理費などのコスト削減
  • 社会的信用、取引先との信用構築に貢献
  • 従業員の意識向上

交通事故が組織に与えるリスクと損失

 交通事故は加害者、被害者のどちらになっても多くの人の人生を狂わせてしまいます。特に勤務中に事故を起こすと、車両の修理費や商品の損害賠償金などの物的な損失に加えて、業務の引き継ぎや再発防止のための社内講習など時間的な損失も発生します。ここからは、交通事故が組織に与えるリスクと損失について紹介します。
 内閣府がまとめた「交通事故の被害・損失の経済的分析に関する調査」によると、事故によって発生する経済的損失は、人的損失・物的損失・事業主体の損失・各種公的機関の損失からなります。

■人的損失
 人的資源の損失、価値の低下による損失のこと。治療関係費、休業損失、慰謝料、逸失利益など。
■物的損失
 物的資源の損失、価値の低下による損失のこと。車両、構築物の修理、修繕、弁償費用など。
■事業主体の損失
 被害者が死亡あるいは負傷することによって、被害者の勤める事業主体において発生する損失のこと。※被害者の生産活動による付加価値から人件費相当分を除いたもの
■各種公的機関等の損失
 交通事故に関連して発生する社会福祉費用、救急費用、車両・医療設備費用、裁判費用、保険運営費といった各種公的機関において発生する損失のこと。

 事故が発生した場合の損失額を見てみると、車両や輸送中の商品の損壊によって発生する物的損失の金額が最も大きく、約1.2兆円になっています。次に多いのは、治療費や慰謝料を含む人的損失で9,280億円に上ります。過去の損失額と比較すると、死傷者数の減少を受けて損失額自体は減少傾向にあるものの、被害者の社会的立場や人間関係を含めると、損失額はさらに大きくなると推測できます。保険に加入していれば、物的損失の多くは保険でカバーできますが、事故の処理や相手方との話し合いにかかる時間のロスなどは保険で補うことはできません。ひとつの事故が原因となって取引先からの信頼失墜、取引停止につながるリスクもあるため、組織的に交通安全に取り組む必要があります。

【事例】NCSの道路交通安全の取り組み

 自動車のリース事業をはじめとした、クルマにかかわる多種多様なソリューションを提供するNCSは、リース自動車および自社の社用車にかかわる道路交通安全に関する目標を設定し、道路交通安全マネジメントシステムを運用しています。NCSの総務部部長・深井に、道路交通安全の取り組みと社用車の管理について聞きました。
 当社がISO39001の認証を取得したのは2012年です。クルマを扱う企業としての社会的責任を果たすために、オートリース業界の中でいち早く取得しました。「社用車による死亡・重大事故を0件にする」という道路交通安全目標を掲げ、危険運転件数0.4件以下(走行距離100kmあたりの危険件数)を達成しています。また、ISO39001認証取得のノウハウを活用し、お客様のご状況に合わせた事故防止の取り組みをご提案するワンストップサービス「NCS交通安全プログラム」などを通じて、お客様へさらなる安心と安全を提供しています。
 また、社内資格として「RTS(Road Traffic Safety)アドバイザー」を設置し、毎年20名程度の従業員を対象に安全運転講習を行っています。実務に即したテーマを設定した上で、お客様への企画提案を想定したグループワーク・ディスカッションを行い、ISO39001への理解度・課題解決力および提案力などが水準に達していれば「RTSアドバイザー」資格を付与。これまでに約200名の従業員が同資格に合格するなど、従業員の提案力と安全運転に対する意識向上に役立てています。

 さらに社用車には、テレマティクスサービス「NCSドライブドクター」を搭載し、運転の状況を可視化。モニタリングした社用車のデータを経営会議で報告するとともに、定期的に危険運転数の件数を部支店長に共有し、部支店内での評価・指導に生かしてもらっています。

交通事故の対応、事故を未然に防ぐための施策

 近年、若者の「クルマ離れ」が進み、運転経験の少ない新入社員が増えています。私生活でほとんど運転しない者も多く、いざ仕事で運転した場合に交通事故を起こすリスクが高くなっています。引き続きNCSの総務部部長・深井に、交通事故時の対応や事故を未然に防ぐための施策について聞きました。
 事故が発生した場合は、従業員から上長、リスクマネジメント部、総務部に情報が共有され、その後全社員に発信。駐車場に停める際に不注意でバンパーを擦った、雨で視界が悪くなりバック中にパイロンに衝突したなど、軽微な事故でも状況や原因を詳細に共有することで、運転中の危険予測と適切な対応を促しています。
 また、従業員に対してさまざまな場面に対応できるよう、教育・訓練の一環として「重大事故訓練」を毎年実施し、事故発生から30分以内で経営層まで情報を共有することを目指しています。業務中に限らず、プライベートで事故を起こした場合でも、部支店などとの連携強化により、迅速な状況把握に努めています。
 地方勤務になると必然的にクルマでの移動距離が長くなり、心身への負担も大きくなります。そこで、すべての社用車を衝突被害軽減ブレーキ搭載車に入れ替えました。クルマを扱う企業として、これからも大切な従業員とその家族の安心と安全を守るために、率先して交通事故の削減に貢献していきます。

まとめ:道路交通安全への取り組みを通じて企業イメージを高めるために

 今回はNCSの事例をもとに「道路交通安全のための取り組み」について紹介しました。道路交通安全への取り組みは社内外に対する交通事故ゼロの意思表示であり、従業員のモラル向上を通じて企業イメージを高めるために不可欠なものです。NCSは道路交通安全マネジメントシステムに関わる国際規格「ISO39001」認証取得のノウハウを生かし、お客さまのご状況に合わせた事故防止の取り組みである「NCS交通安全プログラム」をご用意しております。次回は、テレマティクスサービス「NCSドライブドクター」を利用した具体的な運用方法について紹介します。

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