2022.9.15

テレマティクスのメリットや注意点を徹底解説!

カテゴリー:コラム
テーマ:安全運転・事故削減

 コロナ禍で新たなライフスタイルや営業形態が模索される中、"移動"に関しても効率性や安全性を見直し、新たな付加価値を生み出すテクノロジーが求められています。そこで近年、注目度を急上昇させている技術が、社用車の管理をIoT化するテレマティクスサービスです。大企業から中小企業まで幅広く活用されるテレマティクスサービスは、企業や自治体の車両管理や事故削減、働き方改革、コンプライアンス遵守をサポートする、新たなモビリティ社会の実現に貢献しています。

 ここでは、こうしたテレマティクスサービスの基本情報とさまざまなファクターを、メリットおよび注意点という観点から見ていきます。

テレマティクスとは? テレマティクスのメリットは?

 「テレマティクス」(telematics)は「テレコミュニケーション」(Telecommunication)と「インフォマティクス」(Informatics)を組み合わせた造語で、同技術が活用される多様なサービス全般を示し、「テレマティクスサービス」とも呼ばれます。社用車と通信を行う本格的な双方向通信技術として、90年代後半からVICSやETCなどの普及とともに発展してきました。

 GPSによる位置情報やルート表示を主とした受動的なカーナビを進化させ、車載通信システムとインターネット網を連携する、自動車など移動体専用の相互通信・リアルタイム情報サービスだと考えればわかりやすいかもしれません。

 近年では、自動車メーカーが車載電子制御ユニット(車載コンピューター):ECU(Electric Control Unit)を活用し、車内のボタンとコールセンターを連携させた緊急時対応サービスを提供する例も増えています。実はこうした技術も、リアルタイムの車両情報送受信によるテレマティクスサービスなのです。

 エアバッグ作動と連動した自動緊急通報、車両盗難時の追跡機能などはもちろんのこと、天候不順による想定外の事態が頻繁に発生する近年は、リアルタイムの交通・天気・道路情報と車両位置情報・稼働状況・走行履歴を連動させたシステムが効率的な車両運用につながります。ネットワーク化の強みを最大限に発揮した双方間通信システムこそ、テレマティクスサービスの本領なのです。

 進化するモビリティ社会の象徴ともいえるIoT技術=テレマティクスは、車両運用の効率性アップ、事故の軽減、安全運転意識の向上、エコドライブ促進によるコストダウンなどを生み出すサービスとして、幅広い業界から大きな期待と注目を集めています。

すべての社用車をオンラインで管理できる

 テレマティクス導入のメリットとして、まず挙げられる要素が社用車のオンライン管理でしょう。

 車両1台ごとに管理する半アナログなシステムは、従来から存在しました。しかし、位置情報の取得などは事後のデータ収集が中心であったため、多数の社用車を同時にリアルタイム管理できるテレマティクスサービスとは程遠いものでした。

 いっぽう最近のテレマティクスサービスでは、社用車の稼動状況、時間経過とリンクした位置情報、運転者の情報などが、インターネットと接続した端末上で一元管理できるようになります。車両の位置や動向がリアルタイムで確認できることに加え、当日の走行距離や走行時間、走行速度など、さまざまな情報も一目でチェック可能に。こうした各種データを管理・活用すれば、「目的地まで何分か」「このままでは長時間運転に」など、今確認しておくべき情報が瞬時にわかるのです。

 リアルタイム情報の管理・活用だけでなく、社用車の運用前・運用後にも、テレマティクスサービスは有用性を発揮します。たとえば運転者の情報を管理することで、運転免許証の期限切れもチェック可能に。うっかりミスを防止することで、運用効率を維持する効果も期待できます。

 詳細に関しては後述しますが、道路交通法で記入が義務づけられている運転日報の自動作成などもできます。社用車をオンラインで一元管理する副次的メリットとなるでしょう。

エコドライブやコスト削減にも寄与

 モビリティ社会において重要キーワードともいえる「エコドライブ」に関しても、テレマティクスサービスは大きな意味をもちます。

 リアルタイムで社用車の位置情報・走行データや状態を一元管理できるため、たとえば走行ルートの遠回りチェック、長すぎるアイドリング、エンジンのオン・オフ効率化からアクセルワークまで、テレマティクスサービスで取得したさまざまな車両データを、燃費情報とリンクさせることも容易です。

 情報から車両の動きを最適化できれば、エコドライブの実現とコスト削減に結びつけられます。長時間アイドリングやエンジンのオン・オフ管理は、副次的な効果として無駄な休憩(さぼり)防止にもなるでしょう。

 走行ルートや車両稼動状況の可視化は、配車効率や営業効率のアップにもつながります。たとえば余剰あるいは低稼動率の車両を確認できれば、別の営業所に回すことができます。また、詳細は後述しますが、安全運転意識の向上による事故減少=保険料割引も見逃せないメリットです。無駄が多いほどコスト削減効果は大きくなるため、運用体制の見直しといった観点からも、テレマティクスサービスの有用性が見えてきます。

従業員の働き方改革実現や業務効率向上に貢献

 テレマティクスサービスでは、直行直帰の勤怠管理および労務管理もオンラインで行えます。うまく使えば、従業員が出社する必要がなくなるので、テレワークとの親和性も高く、柔軟な働き方の実施(=働き方改革)に繋げることができます。

 また、前述した道路交通法で記入義務がある運転日報の自動作成も大きなメリットとなるでしょう。手作業で発生しがちだった入力ミスや勘違いも、車両運行データからの自動作成なら起こりません。確認チェック作業も大幅に簡略化できるため、安全運転管理者の日常業務負荷が軽減されます。

 通常業務に支障をきたしがちな事故対応に関しても、事故現場の特定から各方面への連絡、救急・保険対応など、テレマティクスサービスの発信機能(双方向通信技術)を活用できるので、大きなメリットとなるはずです。

 保険サポートと連動したテレマティクスサービスでは、事故発生時には大きな衝撃による自動通報機能が働き、迅速な対応が可能となります。事故状況に関しても、従来の"推測"から各種データを活用した"視認"へ、当事者の"主観"から"客観"へと進化させることで、事故直後の担当者負担を大幅に軽減し、適切かつ速やかな事故処理を行えるようになります。

事故のない安全なスマートモビリティの実現

 近年注目されている、交通や移動をより安全かつ効率化するテクノロジー「スマートモビリティ」の観点からも、テレマティクスサービス導入は大きなメリットを秘めています。スマートモビリティとは、従来の交通や移動形態を進化させる新たなテクノロジーのこと。昨今話題のカーシェアリング、自動運転、MaaS(Mobility as a Service)なども、スマートモビリティの一環です。

※MaaS…IoTを活用し、電車、バス、タクシー、レンタカーなど各交通手段をインターネットサービスで一括利用すること
 スマートモビリティの基本概念には、「交通渋滞緩和」「安全性確保・向上」「経済損失軽減」「環境汚染抑制」が挙げられます。移動の効率化=スマートさで、交通問題全般を解決しようというわけです。

 この中でも「安全性確保・向上」「経済損失軽減」に関して、テレマティクスサービスが有用なことはおわかりでしょう。社用車の急ブレーキ、急発信、ながら運転など、事故や危険運転の可能性をリアルタイムで確認でき、的確な通達による危機回避が期待できます。

一定のコストが発生する点に注意

 気になる導入コストは提供企業によりさまざまですが、機器の導入費用と通信費・基本運用料などを合わせ、1台ごとに数千~数万円程度が発生します。運用スタイル(各種オプション)や機器の搭載機能によって金額が変わるため、まずはシステムのプランニングから検討しましょう。

 テレマティクスと比較されがちなドライブレコーダーは、一時的な導入コストこそ低いものの、保険料削減や車両削減効果は生まれません。いっぽう、こうした効果が見込めるテレマティクスであれば、導入コストの回収も難しくないと考えられます。

 社用車の台数が多いと(運用規模が広範囲なほど)、導入コストは嵩みます。社用車配置の最適化はもちろんですが業務全般の効率化、安全運転促進が総合的にはコスト削減につながるなど、総合的なコスト比較検証が重要です。

従業員から不満の声が出る可能性への配慮が必要

 テレマティクスサービスによる車両管理は、従業員(運転手)の立場からすれば、「運転中は常に監視されている」ことにもなります。導入時は不満の声も出てくるかもしれません。そのため、

  • 常時取得・保存管理するデータは社用車の運用に関する内容のみである
  • 車内の録画映像などプライバシーには十分に配慮する
  • 情報の活用は事故や危険運転などに限定される
  • 社内教育などに活用する際は本人の同意を得る

などを明示した上で、従業員とのコミュニケーション・信頼関係を築く必要があります。運転者の行動形態は個人情報にも直結するため、何より情報漏えいの防止を優先すべきともいえます。その際、管理体制の見直しが必要となる可能性も念頭に置くべきでしょう。

 テレマティクスサービスを運用することにより、そもそもの目的が「運転者を守ること」だと、運転者自身に認識してもらうことも重要です。監視ではなく、守られているという意識が浸透すれば、おのずと従業員の不満も解消されていくはずです。

現代モビリティ社会の実現に不可欠なテレマティクス

 エコドライブや働き方改革、スマートモビリティなど、今や現代モビリティ社会の実現に不可欠ともいえるテレマティクスサービス。多機能サービスだけに、ここで紹介したさまざまなメリットと注意点を踏まえた上で、導入スタイルと活用ポイントをプランニングすることが大切です。

業務内容により導入形態もさまざまなテレマティクスサービスは、その幅広い活用スタイル自体がメリットだとも考えられます。ライフスタイルのIT化と歩調を合わせ、自動車の情報端末化も急速に進むと思われるだけに、その注目度はさらに上がることでしょう。

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