2022.9.28

テレマティクスサービスのよくある疑問は、これで解決!

カテゴリー:コラム
テーマ:コスト最適化

「Telecommunication」(通信)と「Informatics」(情報科学)を組み合わせた造語「テレマティクス」(telematics)。従来のカーナビ&GPS(衛星利用測位システム)を進化させ、インターネットを通じてリアルタイム通信を行うIoT技術のことですが、近年は社用車の管理運用システムとして注目されています。

 一方、テレマティクスサービスの導入検討に際しては、さまざまな質問・疑問点を耳にします。ここでは、その代表例として「テレマティクスでは何ができるのか?」「テレマティクスサービスの利用料は?」「コネクテッドカーとテレマティクスサービスの関係は?」「テレマティクスサービスに必要な機器は?」「テレマティクス保険とは?」の5項目について、解説します。

テレマティクスでは何ができるのか?

 テレマティクスとは、インターネット接続が可能な機器を自動車に搭載し、GPSと連動させることで、社用車情報の一元管理が可能となるシステムです。「GPS内蔵のカーナビをインターネットに接続し、位置や速度などの情報を本社にあるパソコンで管理する」とイメージすれば、わかりやすいかもしれません。カーナビは従来から存在しましたが、リアルタイム管理の正確性や運用効率を進化させた技術が、テレマティクスサービスなのです。

 社用車などすべての運用車両を一括管理できるテレマティクスサービスでは、各車両のリアルタイムな位置情報だけでなく、当日・累計・週単位・月単位など細かく設定した走行距離や走行時間、移動速度などの各種情報を、パソコンで簡単に確認できます。

 また、「目的地までの所要時間」「連続運転時間の監視(長時間運転の防止)」「危険運転を行っていないか」など、従来は難しかった情報管理の一元化や自動化も可能になります。

 危険運転が社会問題化している昨今、急ブレーキや急発進など細かい運転状況まで安全運転管理者が確認できるテレマティクスサービスは、安全性の確保にも大きな効力を発揮することでしょう。たとえば最近では、カーシェアリングを利用すると「急発進」「急ブレーキ」のような"急"の付く運転が何回なされたか、正確な数値を教えてくれます。これもテレマティクスの活用例です。

 運転技能をスコア化できれば、安全運転管理者による指導もスムーズに行えます。同時に、運転者側の安全意識も自発的に高まるでしょう。

 さまざまな情報の一元管理は、業務の効率化や生産性向上にもつながります。社用車の稼動状況をリアルタイムでモニタリングできれば、おのずと配車効率の向上や運行計画の適正化が期待できるでしょう。また、運転日報や業務記録簿などの作成も、車載器から取得した情報をもとに自動作成できるテレマティクスサービスがあります。運転者や安全運転管理者の業務負担が、大きく削減できることはいうまでもありません。

 道路交通法改正(2022年4月から運転者の運転前後アルコールチェックを義務化)により、運転者および安全運転管理者の業務負担は増すばかりです。こうした側面からも、テレマティクスサービス導入による業務改善が急務なのではないでしょうか。

テレマティクスサービスの利用料は?

 テレマティクスサービス自体はインターネット常時接続を利用するシステムなので、通信コストは利用料金に組み込まれているケースがほとんどです。そのためテレマティクスサービスを提供する事業者へ支払う利用料が、管理コストの基本となるでしょう。

 その場合、1台あたり数千円程度の基本利用料(月額)のほか、サービス形態によりクラウドサービス利用料+各種オプション+専用アプリ利用料などが必要になります。また、車載器の購入・リース(レンタル)など形態によって変わる機器導入費込みの料金プランがあったり、車載器を取り付け・取り外しに工事費が発生する可能性があります。自社に適したプランを検討しましょう。

 社用車の台数に応じて利用料も増加するため負担に感じるかもしれませんが、生産性向上や業務効率化に加え、働き方改革や安全管理にも有用なテレマティクスサービスの費用対効果は小さくありません。

 また、後述するコネクテッドカーに社用車を切り替えるコストと比較すれば、車載器を装着するだけですむ経済性も見えてきます。テレマティクスサービスを単体サービスの導入と考えるのではなく、業務改善計画の一環として検討してはいかがでしょうか。

コネクテッドカーとテレマティクスサービスの関係は?

 最近よく耳にする技術に、ICT(Information and Communication Technology/情報通信技術)を活用する「コネクテッドカー」があります。欧米では、すでに2,000万台以上の市場が形成されている技術です。

 トヨタが推進し、レクサスなど高級車に装備される「T-Connect」も、そのひとつ。車両搭載センサーによるドアのこじ開けなどの異常検知、盗難車の位置情報の自動送信、遠隔操作でのエンジン停止など、車両盗難や事故・天災時の緊急連絡・通知に効果を発揮する、将来の自動運転化を見据えた技術といえるでしょう。こうしたコネクテッドカーのベースとなる機能が、テレマティクスなのです。

 また、コネクテッドカーを含む自動車業界のトレンド「CASE」概念も、やはりテレマティクスの応用形です。ちなみに「CASE」とは、「Connected」(コネクテッド)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Services」(シェアリングとサービス)、「Electric」(電動化)の頭文字をつなげた造語です。普及が進む衝突被害軽減自動ブレーキ、全車速追従機能、車線を維持するステアリングアシストなどの機能も、初期段階の「Autonomous」といえます。

 「Shared & Services」の代表例として、カーシェアリングにもテレマティクスが利用されていることは、前述した通りです。同時に、カーシェアの基本概念"共同所有"にも、テレマティクスが生かされています。社用車=従業員間のカーシェアが容易になるサービスと考えれば、イメージしやすいのではないでしょうか。

 「Electric」のEV車には必須な、バッテリー管理の一元化にもテレマティクスは役立ちます。つまり、「CASE」もコネクテッドカーも、総じてテレマティクスサービスといえるわけです。

テレマティクスサービスに必要な機器は?

 テレマティクス用の車載器には、大きく分けて「GPSトラッカー」「OBD-II端末」「ドライブレコーダー」「デジタルタコグラフ」があります。

 「GPSトラッカー」は、位置情報取得装置です。取得したGPS情報をサーバー(安全運転管理者)に送信する、テレマティクスに特化した通信モジュールです。内蔵センサーの働きで、急加速や急ブレーキなどの情報も取得・送信します。

 「OBD」は「On-Board Diagnostics」の略称で、自動車のECU(車載コンピューター)と連携した自己診断機能のこと。「OBD-II」は、その最新フォーマットです。通信型OBD端末は、ECUに保存された走行データをサーバーに送信します。

 テレマティクス用「ドライブレコーダー」は、通常のドライブレコーダー機能に加え、リアルタイムの動態管理・安全運転診断システムを内蔵。車のふらつきや車間距離データの取得、免許証の不所持や期限切れ予防機能などを備えたものもあります。

 「デジタルタコグラフ」は、タコグラフのデータと自動車から取得した各種情報を送信する通信型タコグラフです。定速安全走行や労務管理に効力を発揮します。

 どのタイプを車載するかは、テレマティクス導入で活用するサービス内容によって変わります。用途に応じて、どの機器が必要かを判断するわけです。

 また、車載器機に加え、自動通信プラスアルファの情報送信ツールとなるスマートフォン(専用アプリをインストール)、通信データを受け取るパソコンやタブレット端末も必要になることがあります。すでにデバイスを所有している場合は、アプリやソフトウエアのインストールで流用可能となる場合もあります。

 近年ではデバイスの性能向上に伴い、車載器の代わりにスマートフォンを利用するサービスや、それに連動したテレマティクス保険(後述)も登場しています。

テレマティクス保険とは?

 テレマティクス導入企業向けに各保険会社が提供する「テレマティクス保険」は、テレマティクスで取得したデータを保険料算定に活用することから、通常の自動車保険より保険料を低減できる可能性があります。

 テレマティクス保険には「走行距離連動型」と「運転行動連動型」の2種類があり、前者は文字通り、走行距離によって保険料が変動する仕組みです。テレマティクスとの連動で、より正確な走行距離を反映させられるようになります。

 「運転行動連動型」は、テレマティクスで数値化された安全運転特性を保険料に反映させます。速度違反や急制動・急加速など危険運転につながりかねない場合は保険料が上がり、逆に安全な運転特性と判断された場合は保険料が下がるわけです。保険料が20%割引になるケースもあるので、テレマティクスサービス導入による安全性向上がコストダウンにつながる可能性も十分に考えられます。

 また、テレマティクス保険の多くは専用機器(ドライブレコーダー、車載器、カーナビ用の専用アプリなど)の導入を前提としていますが、外部のテレマティクスサービスに対応した特約が設けられている保険会社もあります。業務効率化・安全性向上・保険料割引をセットで考えられるため、有用な判断材料となりそうです。

まとめ:今、なぜテレマティクスなのか

 実質的に1990年代半ばからスタートしたテレマティクスサービスは、前述した「CASE」概念のトレンド化とともに、注目度を急上昇させています。ライフスタイル全般がIoT化する昨今、当然の流れともいえるでしょう。

 テレマティクスサービス導入には、社用車運用の効率化やコストダウンだけでなく、保険料低減などの間接効果、今後の自動車社会が進んでいくであろう安全性向上や自動運転化に向けたベースシステムづくりなど、さまざまなメリットが考えられます。今やIoT化の最先鋒となった自動車社会において、テレマティクスサービス導入は必須ともいえるのではないでしょうか。

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