2022.5.30
カテゴリー:コラムテーマ:安全運転・事故削減/法令対応
2022年4月、道路交通法が改正されました。今回の改正では、アルコールチェックやその記録に関する項目が強化されており、事業で自動車を利用する際の安全運転管理者の業務範囲が拡大しています。本記事では、改正道路交通法の概要や罰則内容、安全運転を取り巻くトレンドについて解説します。
今回の道路交通法(以下、道交法)改正の大きなポイントは、「安全運転管理者による『運転者の運転前後のアルコールチェック』が義務化された」点と「その確認内容について記録し、1年間保存しておかなければならない」点です。 安全運転管理者は「乗車定員が11人以上の自動車の場合は1台、その他の自動車の場合は5台以上を使用している事業所」は必ず設置しなければならず、たとえば、マイクロバスのような自動車を1台、もしくは一般的な自動車(白ナンバー自動車)を5台以上有する企業であれば、必ず専任の安全運転管理者がいなくてはなりません。 今回の法改正で強化されたアルコールチェックとその記録も安全運転管理者の役割となります。
法令の対象となる事業者であるにもかかわらず、「アルコールチェックを忘れてしまった」「記録をしなかった」場合は、どのような罰則が科されることになるのでしょうか。 結論から言えば、安全運転管理者の業務違反にはなりますが、直接的な罰則はありません。ただし、公安委員会などによる注意勧告、安全運転管理責任者が解任されるなどの可能性はありますので、注意する必要があるでしょう。 そもそも、安全運転管理者の設置が義務付けられている背景には、自動車の安全運転管理において「企業に重い責任が求められている」ことがあります。管理義務を怠り、万が一事故が発生した場合、被害者への損害賠償責任はもちろん、企業の社会的な信頼にも大きな影響を与えます。 道交法で定められた数量の自動車を保有しているにも関わらず、安全運転管理者を設置していなかった場合は5万円以下の罰金が科されます。「設置したはいいが、申請を忘れていた」といった場合も罰則があります。安全運転管理者などを選任または解任した日から15日以内に、定められた事項を公安委員会に届け出ない場合、2万円以下の罰金が申し渡されます。 さらに、安全運転管理者が管理する自動車によって酒酔い運転がされた場合は、企業の代表者や安全運転管理者に5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるおそれがあります。ほかにも事業停止などの行政処分が下される可能性などもあります。 企業は、従業員を守るためにも、自社を長く存続させるためにも、徹底的に法令を遵守し、管理・教育・環境づくりなどさまざまな面から安全運転を浸透させるという意識が欠かせないのです。
近年、あらゆる危険運転が社会問題になっています。今回の改正に関わる飲酒運転だけでなく、あおり運転やながら運転、居眠り運転、急病による運転不能状態などが一例です。 こうした危険運転を未然に防ぐものとして注目を集めているのが「テレマティクス」と呼ばれる技術です。 テレマティクスは、GPSなどの機器を用いて、リアルタイムで、道路情報や車両の運行情報をやり取りすることができます。道路の混雑状況や、どの自動車がどの辺りを走行しているかといった情報はもちろん、急ブレーキをかけた場所や回数、速度超過の情報が確認できるシステムも存在しています。 ほかにも、車載カメラとAIを連動させて、危険運転を察知すると運転者向けにアラートを出したり、危険運転時の状況が分かる画像を安全運転管理者へ送信する機能を備えたものもあります。運転中のスマートフォン利用を検知することもできます。 テレマティクスの特徴は、これらの情報がデータとして蓄積される点です。蓄積したデータを活用することで、従業員ごとでの運転の傾向を把握し、危険運転が多い従業員にはその際の状況を画像などで振り返りながら安全運転のための教育や指導に活かすことができます。 企業に対する安全運転管理への責任は、今後も高まり続けていくことが予測されます。その要請にしっかり答えるためにも、テレマティクスなどの技術を利用して、適切な運転環境を整えておきましょう。
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