2022.5.30

総務や安全運転担当者を悩ます!? 車両管理の基本とコツ

カテゴリー:コラム
テーマ:安全運転・事故削減/車両管理高度化

 もしも、従業員が社用車で事故を起こしたら?状況によっては企業の社会的信用の失墜や多額の損害賠償問題に発展する可能性があります。そんな"もしも"を防ぎ、リスクマネジメントを図るために重要となるのが、社用車の「車両管理」です。本記事では、社用車を安全に管理、運用するために欠かせない「車両管理」の仕組みとその目的を解説します。

車両管理の煩雑さが、安全運転管理者を悩ましている

 取引先への訪問や製品の納品・運搬、送迎など、日々の業務において社用車の利用は欠かせません。その一方で、社用車の管理、運用にはコストがかかるうえ、事故や故障などさまざまなリスクが伴います。そのため社用車を所有する企業は、従業員の安全確保のほか、事故や整備不良などのリスク回避、車両関係のコスト管理など、「車両管理」を日頃からしっかりと行う必要があります。

 内閣府令による道路交通法施行規則では、「乗車定員が11人以上の車両を1台以上使用する事業所、また定員に関わらず5名以上の車両を使用している場合」において、安全運転管理者の選任が義務付けられています。そのため、多くの企業では総務部門に専任の安全運転管理者をおき、車両管理のあらゆる業務を行うことが一般的です。

 では、安全運転管理者が行う車両管理業務にはどのようなものがあるのでしょうか。大きくは「運転者の管理」「車両の管理」「運行の管理」の3つに分けられます。

 運転者の管理は、おもに運転日報のとりまとめや安全運転教育などです。車両の管理は、車両管理台帳や車両管理規定の作成、自動車保険への加入、車検対応などがあたります。運行の管理は、社用車の使用状況や稼動率の把握などが挙げられます。

 このように、車両管理の業務は多岐に渡っています。そのため「安全運転管理者の目がなかなか行き届かない」「事故削減につながらない」「優先順位をつけることができない」といった課題を抱えている企業は多いようです。

煩雑な管理業務を「車両管理システム」なら軽減できる

 そういった中で、車両管理におけるさまざまな業務をサポートできるのが「車両管理システム」です。GPS搭載機器を利用し、社用車や運転者の状況をリアルタイムで記録、管理ができるため、安全運転管理者はオフィスにいながら、パソコン上で車両の動向を把握し、情報を収集、分析できます。

 多くの車両管理システムには、位置情報や走行記録の取得、危険運転の警告、運転傾向の分析など、さまざまな機能が搭載されています。またこれらの機能を使って状況をリアルタイムで把握できるほか、適正ルートの指示や危険運転の注意喚起など双方向のやりとりも可能となります。

 また、車両管理システムには、車両情報を一元管理できる機能や運転日報の自動作成機能が搭載されているものもあります。とくに道路交通法で記入が義務づけられている運転日報は、運転者の記入漏れなどがあると正確な管理ができないうえ、それを確認するために安全運転管理者の負担が増えてしまうケースもあります。

 走行データをもとに自動で運転日報が作成される車両管理システムの機能を活用すれば、運転者や安全運転管理者の負担が減り、適正に運転状況を管理できるようになります。

まとめ:車両管理システムを導入する3つのメリット

 車両管理システムを導入することで、どんなメリットが得られるのでしょうか。実際に導入した企業の事例とともに、メリットを3つにまとめて紹介します。

(1) 管理業務の効率化

 車両情報には、自動車保険や車検、燃料の管理といった車両そのものの情報のほかに、運行状況や運転者の勤怠などさまざまな情報が含まれます。これまでは紙やエクセルなどでバラバラに管理されることが多かった車両情報が、車両管理システムならデータで一元管理ができるため、管理記録の漏れや業務の効率化につながります。また、運行状況などのデータを分析することで、車両配備台数を適正化し、効率的に車両運用を行えます。

 実際に、車両管理システムを導入したある企業では、運行状況から車両の稼動率を分析すると、稼動率の低い余剰車両がいくつかあることが判明しました。そこで、稼動率の低い車両を別拠点に移動させ、適切な台数を拠点ごとに効率よく振り分けることができるようになりました。さらに、余剰車両を減らしたことで、車両に関わる諸費用も大幅に削減できたといいます。

(2) 安全運転の促進

 日々記録される運転者の走行距離や運転傾向などのデータをもとに、安全運転管理者は運転者に具体的な安全運転指導を行うことができます。また運転者も自身の運転傾向を可視化することで安全運転への意識が向上し、事故防止につながります。

 危険運転を察知すると音声ガイダンスでドライバーに警告するシステムを活用し、安全運転の指導を行っている企業では、日常的に音声ガイダンスが流れないように注意を払うドライバーが増え、危険運転や交通事故件数が大幅に削減できたそうです。

(3) 運用コストの低減

 車両管理をしっかり行うと、社用車の管理、運用にかかるコストを削減できます。多くの車両管理システムは、消費燃料を可視化したり、走行データをもとに、最適なルートを提案してくれたりする機能が備わっています。こうした機能で走行距離を短縮できれば、燃料コスト削減につながります。また、運転動画や運転傾向のデータをもとにした指導により、より多くの従業員が安全運転を心がけることで急発進・急停止などが減れば、燃料消費の少ないエコドライブにもつながります。

 安全運転や事故軽減を企業全体で取り組むことで、自動車保険料が軽減されるメリットもあります。約200台の社用車を保有するある企業では、運転者の安全運転、事故削減を目的に車両管理システムを導入しました。危険運転発生時の映像や場所を運転者と共有し対策を講じたことで、結果的に大幅な事故件数を削減。事故が多発していたピーク時よりも保険料率が39%改善したほか、年間約940万円のコスト削減になったといいます。

 このように、メリットの多い車両管理システムですが、各メーカーによって搭載されている機能が異なります。導入を検討する際には、運転者の管理や事故の削減、安全運転管理者の業務改善、コスト削減など、どのような目的で活用したいのか、どのような課題があるのかを明確にし、より最適な車両管理システムをみつけることが大切です。

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