2022.5.30

安全運転や燃費向上も、知っておきたいテレマティクス活用事例

カテゴリー:コラム
テーマ:安全運転・事故削減/コスト最適化

 車載カメラで映像を撮影するだけでなく、GPSで取得した位置情報や運行記録などを掛け合わせて、安全運転を支援する「テレマティクス」という技術が注目されています。近年は、テレマティクスを活用する企業も多く見るようになりました。ここでは、テレマティクスの活用法を実際の事例から紹介します。

テレマティクスの特徴

 テレマティクスの特徴は、複数のデータを組み合わせられる点です。例えば、移動中の車両データと道路交通情報を組み合わせて、リアルタイムで適切な運行ルートを割り出したり、複数車両の稼動データを比較して部署ごとに最適な運用台数を割り出すことで、車両管理を効率化することができます。

 もうひとつの特徴は、危険運転の回避に役立つ点です。車載カメラとAIを組み合わせることで、運転中のスマートフォン利用を検知してアラートを出したり、居眠り運転、急ブレーキ、速度超過などを察知して運転者に知らせるなど、"危険運転への注意を促す機能"を備えたサービスもあります。

 このように、テレマティクスは車両管理の効率化や危険運転の回避などに活かすことができる技術として注目を集めています。

自動車保険の早期支払いや社内教育にも活用されている

 テレマティクスは、車両管理の効率化や安全運転の促進だけでなく、自動車保険の支払いや質の高い運転者教育の実践などにも活用されています。ここでは、テレマティクスを活用した企業の取り組みに事例を紹介します。

 2022年3月に大手損害保険会社が、洪水や豪雨による浸水車両の保険金を、テレマティクスで取得したデータを活用して、早期に支払う実証実験を開始しました。この取り組みでは、人工衛星から算出した浸水深データと、テレマティクスで取得した浸水車両の最終停車位置情報を組み合わせることで、浸水深を把握するというものでした。これによって同企業では、立ち会い調査をしなくても全損判断ができるようになり、事故の連絡から最短翌日に支払い手続きが可能となりました。

 東京都を拠点に車両や倉庫を展開している物流企業も、テレマティクスを活用しています。テレマティクスによって得られた運転診断結果をもとに運転者への教育を行った結果、環境に配慮した自動車使用を推進するための「エコドライブ活動コンクール」で上位入賞を果たしました。同社では、「毎日の運行後、到着確認時に運転データを確認」「指導が必要な内容があった場合は部門長に報告し、ドライブレコーダーの映像を確認、適宜指導を行う」「関連する内容を毎月全社で共有」に取り組むとともに、社内エコドライブコンテストや環境マニュアルの整備を実践。結果、事故件数を約20%削減し、燃費を約25%向上させました。

 もう一社紹介するのは、千葉県を中心に展開する金融サービス企業です。「業務における事故から従業員を守る」という経営方針のもと、事故削減に取り組んでいます。その一環として、テレマティクスを活用。テレマティクスで得られた事故動画や危険運転動画などを資料にまとめ、従業員への教育に活用しています。また、自社の顧客にもテレマティクスを推奨し、単に導入するだけでなく効果的な利用方法など、同社が蓄積したノウハウを顧客にも公開することで、事故削減を推進しています。

 ほかにも、テレマティクスの活用によって「無事故を達成」「保険料負担を減らせた」という企業もあります。

2025年にはテレマティクスの市場規模が626億米ドルに

 多くのメリットが期待できるテレマティクスですが、懸念点もあります。例えば、導入の際に従業員から「行動を監視されているようで気になる」といった声が上がることも少なくありません。そのようなときは、「管理者が映像を確認するのは、事故をはじめとするトラブルや危険運転を検知した時だけである」「データを活用することで、事故やトラブルを未然に防ぐことにつながり、運転者の安全を守ることができる」といったことを事例なども用いながら説明するとよいでしょう。また、一部の部署や社用車でトライアル的に運用を開始し、運用の方法や効果を検証しつつ、少しずつ広めていくことも有効です。

 株式会社グローバルインフォメーションが2020年5月に公開した市場調査レポートによると、テレマティクスの市場規模は、2025年には626億米ドルに到達するという予測がされており、業務での自動車利用において「テレマティクスの実装は当たり前」という時代がやってくるかもしれません。遅れを取らないよう、テレマティクスの導入を検討してはいかがでしょうか。

おすすめ記事