2024.6.27
カテゴリー:コラムテーマ:EV/環境・脱炭素/コスト最適化
EV(電気自動車)とは、電気をエネルギー源とし走行時にCO2を排出しない次世代自動車です。ガソリン車と異なり、エネルギーは充電器から補給します。そんなEVの充電時間はどれくらいなのでしょうか?本記事では、EVの充電方法や充電にかかる時間について解説し、充電時間のムダをなくすポイントについてもご紹介します。EVについて詳しく知りたい! という方はこちらの記事から読んでみてください。EV(電気自動車)とは?特徴や種類についてゼロから解説!
EVの充電方法には「普通充電」と「急速充電」の2種類が存在します。それぞれの充電方法の特徴について解説します。
普通充電は、一般家庭や事務所などに備えられているコンセントの電圧(100V/200V)で充電する方法です。車種や充電設備により多少の変動はありますが、一般的には100Vコンセントで1時間、200Vコンセントで30分間充電すると、およそ10km程度の走行が可能だとされています。
急速充電はバッテリー残量がほとんどない緊急時や業務用で車両を頻繁に利用する場合などを想定した、普通充電よりも高出力で充電する方法です。ただし、バッテリー残量が80%以上になると、バッテリー保護のため充電速度が低下するようになっています。急速充電を利用する際は、80%までの充電を目安にするとよいでしょう。
充電には大きく3つの利用シーンがあります。1つ目は車両を使わない時間帯に事務所などで充電する「基礎充電」、2つ目は高速道路のSA/PAや道の駅、コンビニなど移動途中で充電する「経路充電」、そして3つ目は到着した目的地で充電する「目的地充電」です。基礎充電と目的地充電では、一般的に普通充電設備が設置されています。一方で経路充電では、急速充電設備が設置されていることがほとんどです。
事務所などでの基礎充電用に充電設備を導入する際は、大きく3つのタイプから選ぶ必要があります。充電設備ごとに充電出力や導入にかかる費用が変わるため、導入前に必ずチェックしましょう。
普通充電器にはコンセント型とケーブル一体型の2種類があり、充電口はどちらも「SAE J1772(type1)」という同じ規格に準じています。日本とアメリカではこの規格を標準としており、日本で正規に発売されているEVは、テスラを除き全てSAE J1772に対応しています。テスラ車だけはNACSという独自の充電規格(普通・急速兼用)を採用しており、専用の充電器もしくは変換アダプターを取り付けて充電する必要があります。コンセント型は3kW、ケーブル一体型は6kWと充電時の出力が異なり、またケーブル一体型には充電を自動で制御することで電気料金を削減する機能が付いたものなどもあります。なお、一部のEVやPHEVには6kWに対応していない車種があります。これらの車種を6kWの充電器で充電しても、3kWの充電器で充電するのと同じパフォーマンスになります。※6kW充電器に対応していない主な国産EV:日産サクラ、日産クリッパーEV、三菱eKクロス EV、三菱ミニキャブEVまた、急速充電器は「CHAdeMO(チャデモ)」規格に準じており、日本で流通しているEVのほとんどがCHAdeMOを採用しています。日本国内では50kWの充電器が多く普及していますが、近年では90kWや150kWの急速充電器の普及が積極的に進められています。
先ほどの図で示したように、普通充電に比べて急速充電の導入費用はとても高くなっています。メーカーや充電器の出力により変わりますが、1,000万円程度かかると考えておくべきでしょう。バスやトラックなどの商用車の場合、搭載バッテリーの容量が大きいことや長時間の稼働が想定されるため、急速充電設備を導入するケースが多いです。一方で、営業や送迎などを主な用途とする社用車はほとんどの場合、普通充電設備で十分です。車両数も少なく、導入費用をできるだけ抑えたい企業はコンセント型の充電器を導入しています。逆に充電時間や充電料金を最適化するためにエネルギーマネジメントに取り組む企業の場合は、そのような機能を兼ね備えたケーブル一体型の充電器がよいでしょう。なお、急速充電は短時間で充電できる反面、高出力のため消防法で設置条件が定められています。具体的には建築物と充電設備の間に換気、点検および整備に支障のない距離を保つことであったり、機器や配線を床や壁、支柱などに堅固に固定することなどが挙げられます。※参照:総務省消防庁「急速充電設備を設置する場合の関係法令と消防本部等の指導状況について」
EVの充電時間は「バッテリー容量(kWh)÷充電器の出力(kW)」で算出できます。車種によりバッテリー容量が変わるので、充電時間も異なります。また、バッテリーの状態(劣化具合など)によっても左右されます。今回は複数のバッテリー容量で充電にかかる時間を比較しました。それぞれの充電方法別に充電時間を見ていきます。
日産サクラ(20kWh)、日産リーフ(40kWh)、日産リーフe+(60kWh)の3種類で充電時間を比較しました。 これらを比較すると、バッテリー容量が大きいほど充電に時間がかかり、充電器の出力が大きければ短い時間で充電できることがわかります。20kWhの日産サクラであれば最短約8時間で100%充電でき、60kWhの日産リーフe+だと100%充電に最長で約23.5時間かかります。
普通充電と同様に、日産サクラ(20kWh)、日産リーフ(40kWh)、日産リーフe+(60kWh)の3種類で充電時間を比較しました。なお、前述したように急速充電ではバッテリー劣化を考慮して80%までの充電に抑えるため、ここでは80%充電時の充電時間としています。急速充電時には、20kWhの日産サクラであれば最短約40分で80%充電でき、60kWhの日産リーフe+だと80%充電に最長で1時間ほどかかる計算となります。普通充電と比べて高出力であるため充電時間は大幅に減少します。これらの充電時間は日産の公式サイトを基にした概算ですので、メーカーや車種ごとの充電時間は各社の公式サイトを確認してください。
ここまで普通充電、急速充電の充電時間を見てきましたが、ここではガソリン車の給油時間と比較していきます。セルフガソリンスタンドでは、100Lを給油する際の給油時間は4分を目安とするよう消防庁によって定められています。普通車の燃料タンクが50~100L程度であるため、今回は満タンにするのに最長で約4分かかると仮定して比較していきます。
特に普通充電に関しては、ガソリン車と比べるととても時間を要することが分かります。しかし、事務所や目的地などの車両を使っていない時に充電できることを加味すると、充電方法の使い分けによって不便さはある程度解消できるでしょう。※参照:消防庁 「消防危第12号 『顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所に係る運用について』」
EVの充電の待ち時間はどのように効率化できるでしょうか。ここでは充電時間のムダをなくすポイントを紹介します。
ガソリン車の場合だと、わざわざガソリンスタンドまで行き給油する必要があるため、一度の給油で満タンにしたいと考えるのではないでしょうか。しかしEVの場合、事務所に充電設備があれば車両を使っていないときにいつでも充電することができるため、事務所へ戻れるだけの最低限の充電さえあれば問題ありません。営業や送迎など一日の走行距離が短いあるいは予測できる場合は、外出時の充電の心配はほとんどいらず、一度で満充電にする必要はないといえます。むしろバッテリーが満充電の状態を長時間維持すると、バッテリーの劣化を招く恐れがあるため、基本的には80%~90%を維持するのがいいでしょう。
長距離の運転が見込まれる場合には、事前に充電スポットの場所を確認し、移動途中での休憩も兼ねて充電ができるように計画を立てることをおすすめします。高速道路のSA/PAに設置されている急速充電設備は、1回あたり30分までの利用に制限されていることが多いため、60kWhなどのバッテリー容量が大きいEVの場合は30分の充電だとあまり回復しません。余裕を持って注ぎ足していくように計画することが重要なポイントです。
事務所に設置する充電器を3kWから6kWのものに替えるのも効率化を図るポイントの一つです。軽EVのようにバッテリー容量が小さいEVであれば3kWでも充分に事足りますが、仮に60kWhなどの大容量のEVに乗っている場合は、朝までに充電を完了させるためにも出力数の高い充電器を設置した方がよいでしょう。「急速充電を導入した方がもっと効率がいいのでは?」と考えた方もいるかもしれませんが、急速充電は導入費用がとても高く、さらに設置には一定の条件を満たしている必要があります。費用対効果などを考えると、6kWの普通充電器を導入するのが最適でしょう。なお前述したように、車種によっては6kWの充電器を接続しても充電速度が変わらない場合もあります。車両が6kWの入力に対応しているか確認しましょう。
日本だけでなく世界中のメーカーがEVの開発に力を入れています。今後EVの充電時間が大幅に短縮される可能性は十分にあるといえます。
経済産業省が2023年10月に公開した充電インフラ整備促進に向けた指針では、充電事業の高度化・高出力化が掲げられています。この方針の提示もあり、EV充電サービスを展開するTerra Charge(テラチャージ)などが90kW、150kW充電器の無料設置を進めるなど、経路充電における急速充電の平均出力が増加しつつあります。また、充電器設置に関する補助金も提供されていることから、充電器の高出力化は今後もさらに進んでいくでしょう。※参照:経済産業省「充電インフラ整備促進に向けた指針」
現在のEVに使われているリチウムイオンバッテリーは電解質が液体であり、可燃性や漏れなどの危険性があります。このリチウムイオンバッテリーの電解質を液体から固体にすることで、より安全・高容量・優れた出力特性になるといわれており、開発が進められています。将来的にはEVのバッテリー性能も向上する可能性が高いです。
EVの充電時間はガソリン車の給油時間に比べて長いですが、計画的な充電や充電時間のムダをなくすポイントを抑えることで快適にEVを活用することができます。また、EVを導入する際は走行距離や充電設備の選定などを検討することをおすすめします。
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