Project Story

プロジェクトストーリー

EVリース導入プロジェクト

社会に必要とされる電気自動車の推進
時代を先駆け、走り抜いたチームの軌跡

イントロダクション

度重なる災害に停電。電気自動車(EV)の可能性に気づいたNCSは、EVがまだ今ほど広がっていない2018年、EVのリース推進プロジェクトを立ち上げる。営業を始めた最初の3カ月で契約できたのはたった10台ほどだった。しかし、今や、さまざまな企業から導入の相談を持ちかけられるほどに成長したプロジェクト。苦難を乗り越えた成功の鍵はどこにあったのか。

ここがポイント

  • 度重なる災害の問題解決方法を模索
  • BCP対策、SDGsと時代を掴む先見性
  • 自動車メーカーをうならせた知識の収集

梶原 雅也(営業第二部次長)/佐藤 利嗣(営業統括部マネージャー)/加藤 陵太(東京営業部)

EVの可能性を再認識した
北海道胆振東部地震のブラックアウト

いつ頃からEVのリースのプロジェクトに着手したのでしょうか?

梶原2016年ごろに自動車業界に大きな変革を促す「CASE」というキーワードが聞かれるようになりました。英語で、コネクテッド(Connected)、自動運転(Autonomous)、シェアリング(Shared)、電動化(Electric)を意味する単語の頭文字です。自動車が単に所有して乗るものではなくなってきたのです。自動車の価値そのものが変化し始めていました。この変革はオートリース会社にとってもチャンスと考えました。私たちは、まずはEVに着目し、お客様にどうEVをプロモーションしていくか、ということの研究のため、2018年に本格的なEVリースの企画に着手し始めました。

北海道胆振東部地震の停電があった年ですね。

梶原そうです。皆さんご記憶にある通り、ブラックアウト(大規模な停電)があり、その時に、現地のコンビニエンスストアの行動が注目を集めました。当時、停電が続く中、ガソリン車を使って発電して、レジや電子レンジを動かして営業を継続されていました。自動車を発電機としてフル活用されていたのです。そのことを知って、今後の災害対策にEVこそ重要な役割を果たすのではないかと。自然災害が頻発する中、企業のBCP(事業継続計画)も課題に上がってきていましたし、大規模停電によって自分たちが進めていたEV導入の必要性を再認識しました。

EVリースナンバーワンを目指すも
待っていた散々な結果

EVの営業活動をスタートしてどうでしたか?

梶原CASEの流れに加え、BCP対策の重要性などから、このプロジェクトは社長自ら「EVリースでのナンバーワンと目指す」とメッセージを発して企画が進みました。全社あげてのプロジェクトとなり、500人ほどの営業全員が販売に乗り出しました。
しかし当時の結果はEVや電気に関する知識が乏しいこともあり、散々でした。最初の3カ月、500人の営業が動いて、成約数は10台だったのです。

加藤私は営業活動をしなければならかったわけですが、この企画が立ち上がったとき、正直、どう提案すればいいのか、と途方に暮れたことを覚えています。EVは高額ですし、車種も少ない。走行距離も短かった上に、都内で賃貸ビルに事務所を構えているところでは充電方法の問題もある。通常のガソリン車にとって変わるものではない状況で、どうお客様にご案内するか悩みました。今思えば、クルマの価値の既成概念に捕らわれていたことが悩みの原因でした。その時には、梶原さんや佐藤さんなど営業企画部門の方にもだいぶ相談しました。

販売を好転させた
自動車メーカーに負けないEVの知識

その苦境をどうやって乗り越えたのでしょうか?

梶原最初の結果は散々でしたが、災害の多さや環境問題などの将来を考えたときに、当社として、EV化の必要性に対する考えは揺るぎませんでした。なんとかして、この必要性、EVの価値をお客様にお伝えしてご理解頂きたい、という強い思いがありました。

佐藤リース成約が伸びなかった問題の一つは、私たちの知識不足でした。それまで、ガソリン車やディーゼル車を販売してきて、そのあたりについては十分な知識を持っていたのですが、EVを提案するにはクルマの知識だけでなく電気の知識が足りなかった。そこに注目しましたね。

梶原私が当時いた営業統括部は、営業部門の皆さんが商品・サービスの良さをよりよく伝えられるようにする、というのも大事な仕事で、そのためにも徹底的にEVの知識、電気の知識を身につけようとしました。書籍やネットなどに掲載されている情報もくまなく読み込んで、EVそれぞれのパーツを製造しているメーカーにまで電話していろいろなことを聞いていましたね。そして集めた情報を資料にまとめて毎週のように営業部門の皆さんに配っていきました。
当社でデモ用のEVを保有し、営業担当者に実際にEVを体験してもらうなど、自信を持って提案してもらえるように、考えられることはすべてやりました。

加藤これまでのお客様への営業活動でも自動車メーカーさんにも同行してもらうことがありますが、EV提案では、様々な利用シーンでのEVの活用方法や、建物からの充給電に関することなどは、私たちの方がメーカーさんより詳しい場合も多く、私たちがメーカーさんに代わってお客様の質問に答えることもしばしばありました。

佐藤また、デモ用のEVを持っていたので、お客様のところにEVを持っていって見てもらったり、助手席に同乗して体験してもらったり、そういった機会を積極的に作っていったこともお客様の理解を得られるきっかけになったと思います。

お客様の必要性に応える
BCP対策として

提案の切り口としてはどのように?

梶原自然災害が頻発する中で、企業の社会に果たす役割は更に重要性を増している状況になってきています。その一つが企業そのものを存続させる力、そしてレジリエンスを高めることです。災害時、緊急時に通信手段や生命を維持するための最低限の電力を確保する手段の一つとして、BCP対策にEVを勧める方針を取りました。
2019年に、千葉県で台風が原因の大規模停電が起きた際には、お客様の要請を受け、実際に当社で所有しているEVを現地に持ち込みました。そこで停電で困っていた福祉施設などにEVから電気を供給しました。給電先からは感謝され、その実績は私たちのお客様や株主様からも非常に高い評価をいただきました。
今では、BCP対策やSDGsに関心の高いお客様から「EV導入に関して話を聞きたい」「説明を受けたい」というご連絡をいただくまでになりましたね。

お客様のニーズに応えるのではなく
将来を見据えてお客様に提案する

プロジェクトを通して感じたことは?

梶原以前は、お客様のニーズにどう応えるかが営業活動のテーマと考えていましたが、このプロジェクトでは、お客様も把握していない未来に先回りして、将来性のある、お客様の気付いていない潜在ニーズに対する提案を行うなど、今まであまりできていなかったことを実践してきました。当時、EVがまだ広がっていないときに他に先駆けて情報を集めたり、何ができるのか必死に考えたり、いい経験になりました。また、結果として社会貢献につながるようなプロジェクトに携われて良かったと思っています。

佐藤梶原さんが言うように、新しいチャレンジに参加できたことが良かったし、会社全体をあげてのことだったので、社内、社外を問わず大勢の人と協力して作り上げる喜びもありました。また、当社のチャレンジすることに対して応援するような社風、自由な雰囲気もプロジェクトを遂行するために良かったと思います。今、またどんどん新しいものが出てきているので、それらに対応していくことが次の目標です。

加藤車の性能や利便性以外のところでのアピールが必要とされた営業活動は初めてで、大変でしたが勉強になりました。EVを成約してもらった企業から、BCPにも使えるいいものを提案してもらったと喜ばれることもありますし、多くのメディアでEVが取り上げられ、SDGsやBCPが絡んで動きが活発になってきているのを感じます。成約件数も増えていますし、今までEV化を目指して経験してきたことがこれから力になっていくだろうと思います。
また、私が担当している医療や福祉の法人では、EV車は災害時に給電して明かりを灯したりすることはできても、今の車種では普段の高齢者の送り迎えや車椅子での利用が難しいといった点や、充電の問題など、新しい課題が出てきています。EVリースが伸びてきているからこそ、新しく開発されるさまざまなEVや周辺サービスに目を向け、今までの経験を生かしながら新しい課題の解決にチャレンジしていきたいと考えています。