始まりは親しくさせていただいているお客さまからの一本の電話でした。
「最近はインターネットで車を注文する個人が増えているらしい。インターネットモール運営会社に転職した友人がいる。一度会って話を聞いてみないか」
当時、個人ユーザー向けに中古車(業者)を紹介するWEBサイトがあることは知っていましたが、個人ユーザーが新車を直接注文できるWEBサイトがあることは知りませんでした。
自動車は個人にとって高額な商品で現物を見ないとなかなか注文に至らない。新車となるとオプションなど細かい仕様があり、対面でないと営業が進まない。また、リースとなると、最後までお支払いいただくだけの資力がお客さまにあるかの確認業務(審査業務)が必要。これらのことからインターネットでの営業は新車販売、オートリースには馴染まないと考えていました。

日本国内では約370万台のリース車両が利用されています。そのうちの大半が法人ユーザーのリース車両です。金融面やサービス面等をワンストップで対応してくれるので、複数の車両を利用する法人ユーザーにとってオートリースは車両管理が容易となり、非常に便利なサービスと言えます。しかし、法人ユーザーが利用している車両の総台数(所有+リース)は、日本市場では、全体の22%程度。残りの78%が、実は、個人ユーザーなのです。個人ユーザーは、自動車の所有に対する意識が強く、自動車ローンを利用した自己所有が中心で、オートリースで自動車を利用する方はまだまだ少数です。
日本カーソリューションズの株主であるNTTは、グループ会社に多くの従業員を抱えていて、私たちは、そういったグループの社員や取引先様の社員向けに福利厚生の一環として自動車を提供(職域営業)してきました。それらも含めた個人ユーザー向けの累計販売台数は6万台以上となり、個人ユーザー向けリースでも日本カーソリューションズは業界トップクラスの規模ではあります。
しかし、より多くの個人ユーザーにオートリースをご利用頂くには課題がありました。個人ユーザーがマイカーの取得を検討する土日や休日、夜間は当社が休みであり、お客さまにリース料の提示をすることも、リース審査の申込みを受けることも出来ません。また、個人ユーザーは1台の車両にいくつものオプション装備や支払方法を検討するため、相当数の見積作成が必要となります。お客さまも遠慮してしまうし、実際、そのように1台につき多数の見積を提示することは営業効率上の課題でもありました。

良く考えてみると、24時間365日、自宅でも移動中でもパソコンやスマートフォンで自分が欲しい情報を探せる時代。オートリースも料金シミュレーションや審査手続きがインターネットで出来るようになれば、お客さまは便利ですし、リース会社の営業効率も上がるかもしれない。以前は、現物を見て量販店で購入していた家電製品も、今は口コミ情報などを頼りにインターネットモールで購入するようになった。その延長線上に自動車があってもおかしくはない。自動車の個人市場でビジネスが展開できれば、そのマーケットは大きい。中古車と異なり品質が安定している新車なら、インターネットで購入を検討するお客さまもいるはず。
難しさを感じながら、そのように思う自分がいました。

当時、私は法人向けの営業担当でした。個人ユーザー向けの部門(職域営業担当・代理店営業担当)は他にあります。そのような立場でありながら、同じく法人向け営業部門の組織長である上司にこの話を持っていけば、 「そういう話は、個人ユーザー向けの担当に任せて、あなたは、あなたでやることがあるでしょう」 きっと、そう言われるだろうと思われました。
少し時間が経ちました。私の思いは膨らむばかりです。そこで、上司に、お客さまから教えて頂いた情報と自らの思いを伝えることとしました。
上司の反応は、意外なものでした。
「それ面白いね。一緒に行ってみよう」
即答でした。しかも同行すると言うのです。恐らく上司にも私と同じような思いがあったのだと思います。

上司とインターネットモール運営会社に赴き話を聞くと、モールで取引される額は増え続けており、自動車の取引も少しずつではあるが増えているとのことでした。インターネットで新車を購入される方は、値引き交渉などが煩わしいと思う方やディーラーの営業マンに売込みされることが苦手な方が多いとのことです。私自身、売込みされるのが苦手ですので、とても共感出来ました。
情報収集を重ねるうちに、「インターネットでの取り組みに挑戦するべきだ」と感じました。上司も同意見です。そこで、マイカー(職域営業)部門や審査部門、システム部門に、情報共有をしたうえで、「一緒に検討してくれないか」と、持ちかけてみました。すると、みなさん自分の業務で忙しいにもかかわらず、快く了解してくれて、非公式な打ち合わせを開催し、検討を進めることとなりました。
検討会では賛成意見、反対意見、その他様々な意見が出されました。「まだまだ法人向けにリソースを割くべきで個人ユーザー向けには引き続き職域営業や代理店での営業を中心に考えるべきだ」といった慎重論や「個人リースは露出が重要、広告宣伝の意味もあり推進すべきだ」といった推進論など多数の意見が出されました。何回か議論を重ねましたが、結局、検討会では結論を出しきれませんでした。
結論が得られないまま、いつまでも議論を続けるわけにもいきません。そこで経営陣に、賛否両論をあげて判断をいただくこととなりました。「個人ユーザー向けのWEBサイトでの営業を検討した結果、反対論もあり、全会一致にはならなかったが、是非とも本格的な検討を開始したい」といった趣旨の伺い書です。うまくいくとは限らない取り組み、却下覚悟の審議(伺い)でした。
すると、経営陣からは将来を見据えて以下のような指示が出されたのです。
「個人ユーザーにオートリースの良さが伝わるような取り組みを幅広く検討する正式なプロジェクトチームを発足すること」 却下どころか、非公式だった検討会を正式なプロジェクトに格上げして推進しろ、と言うのです。「課題も多く却下されるだろう」と諦めかけていた取り組みに、経営陣から「簡単にあきらめるな」と背中を押される格好になりました。  そして、このプロジェクトの事務局をなんと私が務めることとなったのです。当時所属していた営業部署の同僚も私が担当していたお客さまを引き継いでバックアップをしてくれることとなりました。

入社以来、法人営業一筋の私です。経験したことの無い取り組みですから、プロジェクトについて非常に不安な気持ちでいました。「誰も協力してくれないのではないか」、「何から何まで自分がやらないといけないのではないか」、そういった思いが頭をよぎります。
しかし、プロジェクトが動き出すと、システム部門、審査部門の社員など、個人向け営業業務と関係の薄い組織の人々も、本来業務があるなか、時間を惜しまずに一体となってプロジェクトを推進してくれました。不安は全くの杞憂でした。 プロジェクトで検討を重ねた結果、課題は多いものの、一人でも多くの方々にオートリースを利用してもらうためには、やはりインターネットが有効だろうとの結論に至り、新しい個人向けWEBサイトをつくる構想が出来上がりました。好きな車のリース料シミュレーションや審査の申込みが出来る、オートリースの良さも確認できるWEBサイトです。
今までは、当社が営業している時間帯にしか提供できなかったサービスが、休日や夜間、自宅のパソコンやスマートフォンで、どのタイミングでも情報を提供出来るようになります。 勇んで開発ベンダーに仕様を示し、概算の見積を依頼しました。見積金額を示してWEBサイトオープンの最終判断を経営陣に仰ぐつもりです。
しかし、開発ベンダーから提示された概算見積を見て、がっかりしてしまいました。とても高額だったのです。これでは、WEBサイトが完成しても、事業としてうまくいくか分からない。事務局として経営陣向けの提案用の資料を整理しながらも難しさを感じました。それでも個人向けビジネスを進化させたい。複雑な気持ちでした。 WEBサイト開発に関する是非について、経営会議が行われている間、その時間はとても長く感じられたことを覚えています。
経営陣の判断はこの挑戦を認めてくれるものでした。
ダメだと思っていましたので大変びっくりしました。いや、ほっとしたような、気合が入るような。当時の自分の気持ちをうまく表現することが出来ません。とにかく、WEBサイトOPENに向けてベンダーも交えて具体的な開発がスタートすることとなったのです。
会社としても初めての個人向け専用のWEBサイトの構築。どうすればお客様にとって使いやすいものとなるか、見積は正しい計算結果が表示出来るか。開発は進んでは戻りを繰り返しました。
個人ユーザー向け部門の要望や審査部門の意見を聞きながら、システム部門の社員とともにベンダーとの交渉や会議、システムテストなどが何度も続き、追加機能の開発を含めると、足掛け2年近くを要することになりました。

こうして完成したのが「リースDeマイカーオンライン」(https://mycar.ncsol.co.jp/)です。このWEBサイトを基盤に、すそ野が広がっていきます。インターネットモール最大手である楽天市場への出店、ふくおかフィナンシャルグループや「Zaim」(大手家計簿アプリ)との連携も始まりました。オートリースのメリットを伝えるとともに、日本カーソリューションズを知らなかった方々に、社名を知ってもらえるようになりました。

まだまだこれからのWEBサイトですが、「インターネットを介した大きなビジネスフィールドに挑戦するチャンスをいただいた」と感じています。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

日本カーソリューションズはベンチャー企業ではありません。ユーザーと向き合い、信頼関係の中で、着実に成長するビジネスモデルです。
しかし、一方で、新しい挑戦も認めてくれる社風と、それを支える様々な専門知識を有した人、バックボーンがあります。これからも自動車の業界は変わり続け、新しいビジネスが産まれるチャンスがあります。このビジネスチャンスをものにするためにも、進化と深化を推進力に、「新NCSブランド」を確立させていきたいと思います。